マフラーマン [作者:larkheart"95]
■ 第15章
〜泡にされようとも君に見せたいのさ〜
気付けば東の空が群青色に染まっていた。夜は過ぎていたのだ。
無様に傷を負った自分の顔を嫌いたくなった。そして、矢の切りつけた場所を撫でてみた。
…ない。傷がさっぱり消えている。でも確かに服には血痕があったから夢でもないだろう。
「誰がこの一晩で治してくれたんだろう…」
俺は一人で呟いた。確かなのは決して一般的な治療法ではなく、俺らの種族の魔力だったであろうということ。
しかし、思った。こんな助けられてばかりでどうやってエスパーを倒せるのだろうか?ということ。
未だに一人で幹部を倒せたことが無い。ただ従うのみの雑兵はたいしたこと無い。だが…
悩みながら俺は天を仰いでいた。起き上がりもせずに。ただ暗い青の中にぷかぷかと浮かぶ雲だけを見ていた。
ふと、黒い影が見えた。…誰だ?敵ならば向かい打つ気力も体力も無い。
「炎風の少年よ…」
どこかで聞いたことのある声だった。ただ続きが上手く聞き取れなかった。
「いつまで寝ているのかのぅ。まぁ、よい。ゆうひちゃんから飯を預かってるからここにおいておくぞ。起きて食べたらわしの元を訪ねるように。」
「…長老?…ゆうひ?…えっ!」
つい、ゆうひという言葉に反応してしまった自分はこのときほど穴があったら入りたかった。
「す、すみません。醜態晒せて…」
俺は冷や汗が溢れていたが、長老はからからと大きく笑った。
「微笑ましいくらいに若いわ。ほれ、ゆうひちゃんのおにぎりじゃ。…わしもちょっと貰ってよろしいかの?あまりに美味しそうじゃ。」
正直言うと嫌だったが長老のことだから仕方ないと思い、5つあるうちの1つを渡した。
ゆうひのは期待を裏切ることなく、とても美味しかった。と、同時に心配かけていたことを思い、こころが苦しくなった。
「んがっ!なんじゃこれは!…イナゴじゃないかっ。勘弁してくれ…塩が濃すぎるぞ!」
俺は苦笑いするほか無かった。たまにゆうひは何を作るにも変わった食材をたまに入れてきて、なれないと正直きついからだ。
「あー…じゃあ、ちょっとわしのうちまで来てくれないかね?」
俺はうなずき、従って行った。何かあることを期待して。
しばらくして着いた。そして、大部屋に連れて行かされた。そこには翼と桃川が座って待っていた。…ゆうひもいた。
長老は俺を同じく座らせ、上座に上がって口を開いた。
「この村も多くの人々がエスパーに連れて行かされ、残りも少なく、壮年のものに至っては全滅に近い。」
重苦しそうに長老は俺たちに語った。
「君たち四人があくまで抵抗するという意思を受けたが他のものは諦めておる。そこでだわしと君たち4人だけで抵抗しようと思う。」
そう言うと、長老は箱から何か変な珠を取り出した。
「これを肌身離さずもっていてくれ。君たちの力の助けになる。」
珠は色がそれぞれ違っていて、持ってみると変な感覚に襲われた。
「…なれるまで時間がかかるであろうから一週間特訓していただこうかの。わしの能力で一週間、敵も足止めさせて置いたから問題なかろう。」
すでに用意はできているらしく、初めてここの門を敲いたときにガムを噛んでいた少年が待っていた。
「君らには君らの属性でこの少年を倒せるようにならないと戦うにはまずいのだ」
この少年を?!俺らは顔を見合わせた。
↓目次
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