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胸に咲いた黄色い花  [作者:えり]

■14

「おいしい?」

 

はやく感想が聞きたくて、まだ一口しか食べてない亜紀の顔を覗き込む。

 

「うん」

そういって、亜紀は、優しく笑った。

その言葉もうれしかったが、何よりこの笑顔に、胸がぎゅうっと締め付けられた。

俺って、重症だ。胸の中でつぶやく。

 

「何でいきなり、ご飯作ったりしたの?」

 

「え。まあ・・・」

 

亜紀の突然の質問に、言葉が詰まった。

少しぐらい頼りになるとこを見せたいから。なんて。

恥ずかしくて、口が裂けてもいえない。

 

「ま、俺もそろそろこれくらいはできとかなきゃね。」

 

もう、二十歳すぎてるしな。と自分に突っ込みを入れる。

しかし、亜紀は納得いかない、といった顔つきだ。

そのまま黙って、もくもくとカレーを食べ続ける。

俺はその顔をいぶかしげに見つめた。

 

なんだっていうんだろう。あの、さっきの焦った態度もそうだけど。

今日の亜紀はなんだかおかしい。いつもの、あのクールな亜紀じゃない気がする。

 

もしかしたら、俺が料理したのが気に入らないんだろうか。

俺としては、少しでも亜紀の役に立って、男らしいとこを見せてみようと思ったのだが。

やっぱり、亜紀は俺のことは、一人の男としてじゃなく、ペットのように思っているのだろうか。だから、料理なんてものを生意気にした俺に腹を立ててるのだろうか。

 

 

ペットが必要以上のことをしなくていい。ただ、私に懐いてるだけでいい。

 

もし、亜紀にそんなこと言われたら、いくら俺でもプライドが粉々になって撃沈するよな〜。

 

その場面を想像して、一人、鼻をすすった。

 

 

 



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