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胸に咲いた黄色い花  [作者:えり]

■5

「全然、だめだめじゃん・・・完全、ただのひもだよ。」

深く、落ち込む。
情けなさに支配されるっていうか、プライドがボロボロっていうか・・・。

仕事をしていない自分はただの飾りだけの人間に思えてくる。
まあ、ひものくせにそんなことを思うのは、今更ってもんだけど。
だけど、亜紀にだけは何にもできない情けない奴って思われたくないんだ。

だから、家事という仕事をやろうとしたはずなのに。

いつまでも落ち込んでいても仕方ないので、ベッドから重い腰を持ち上げ、自分用につくられている朝ごはんを食べることにした。

そこで、ピンポン、とインターホンが鳴った。

「なんだよ・・・」
今から食べようかと、お箸を持ち上げているところだったのに。

けれど、無視するわけにもいかないので、仕方無しに玄関へと向かい、ドアを開けた。

「はーい・・・」
ガチャリ、と空けた瞬間、思わずゲッと言ってしまった。

そこには、少し長めの黒髪を風に吹かせている男が、にこにこしながら立っていた。

「なんだよ、ゲッって!!失礼な奴だなぁ。いくら俺でも傷つくってーの。」

そういいながらも、その男はケロリとした顔で、「おじゃましまーす」といいながらズカズカと玄関口ににあがりこんできた。

「オイ、勝手にはいるなって!」

あまりの態度に思わず肩をつかみ、引き止めた。
しかし、その男はこちら冷ややかな視線をむけ、

「お前にそんなこという権利があんの?ここは亜紀さんチでしょ。」

と、サラリと痛い言葉をはき捨てた。

その台詞に、声がぐっと詰まる。
さすが、同業者とでもいったところか。ひもが言われて嫌なところを、よくつかんでいる。

結局、追い返すわけにも行かず、しぶしぶ家にあげた。

「で、何しにきたんだよ。尚(ナオ)」

 



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