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胸に咲いた黄色い花  [作者:えり]

■9

じりじりと太陽が照りつけている外を眺めながら、クーラーの涼しい風に当たる。

今は本当に夏なんだろうか、と、涼しすぎる社内に不思議な感覚を感じながら、亜紀は昼食をたべていた。

ふと、清の言っていた「地球温暖化」という言葉を思い出す。
あのときは笑ってしまったけど。ほんとうに地球は深刻な状態かもしれない。そう思うと、眉間にかすかなしわがよった。

けれど、清がそんなことをいうなんて、やっぱり似合わないなあ、と。
思い出して、またクスリと笑ってしまった。

 

 

「何?亜紀。笑ったりして」

 

 

隣にいる小枝(さえ)が、不思議そうに顔を覗き込んでくる。
なんでもないよ、と答えると、小枝はいたずらな笑みを浮かべた。

「また清(セイ)くんのこと考えてたんじゃないの?」

そういって、からかうように肘をあててくる。
すると、前に座っていた1つ年下の陽子(ようこ)が、興味深そうな顔で会話にはいってきた。

「清くんって、例の亜紀さんの彼氏ですか?かわいいってうわさの・・・」

自分で答えるよりも早く、横にいる小枝が返事をする。

「そうそう。そのすっごいかわいい顔した子。初めて海で見たとき、びっくりしたもん。なんか少年っていうかね。私らより2こ下なだけなんだけど、すごく幼くみえるの。だけど背はそこそこあるから、どこか男らしいっていうか、かっこよさも持ってるんだよねー。」

小枝は自慢げに、話し出す。
その様子に、少しむっとする。清のことを他の人が話してるだけなのに、どうしてこんな複雑な気持ちになるんだろうか。
こういうのは、やきもち?

「へえー。じゃ、美青年ってとこですか。」

「うん。ま、そんなかんじ。でねー、実は私もいいなって思ってたんだけど。いつのまにか亜紀とできてたんだよね」

小枝は横目で恨めしそうに見てくる。

「もう、小枝。いいから。」

少し困った顔で、制した。

「そうなんですか。てことは、その日に出会ってその日につきあったってこと・・・ですか?」

陽子は珍しいことをきいた、という風に目をぱちぱちさせる。

意外、だったのかもしれない。
たぶん、私がそんなキャラじゃないと思っていたのだろう。

「まあ、そうだけど。意外?」

そう聞きかえすと、陽子は正直に、ハイ。と答えた。

「なんか、亜紀さんって年上の人と付き合ってそうだったから、驚きました。ていうか、想像できないです。クールな亜紀さんが年下の彼とつきあってるとことか」

クール。その言葉に、ふっと過去の思い出がよぎる。

 



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