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胸に咲いた黄色い花  [作者:えり]

■11

けど、清だけは、何かが違った。
彼といると欠けていたものがすべて満たされる。
まるで、ピタリと合わさったピースみたいに。

そして、いつまでもくっついていたいと思う。
私だけのものでいてほしいと、心の底から願ってしまう。

きっと、私と清の傷は似ているんだと思う。だから、お互いを慰めあうことができるのだ。

それは、傷をなめあい、お互いの孤独を埋めあってるだけの関係かもしれない。
けれど私は確かに満たされているから、それでいいと思う。

それに、彼のあの無邪気な笑顔や、行動、言動はわたしにとって麻薬のようなもので。
それは、ないと生きていけないほどだ。

だから、清は私にとってなくてはならない人なのである。

 

 

だけど。

 

 

食堂の流し台にトレーを置きながら、心が痛くなるのを感じた。

 

私の望みとは裏腹に、私たちの関係はいつ壊れるかわからない。

清は、今までも私のような女と何人とも一緒に暮らしてきたらしい。
ひも、っていう、ある意味職業だよ、と清は笑って言った。

その瞬間、清が、気まぐれな風のように思えた。
私に飽きたら、また別の女性のところにいってしまうんじゃないかって。

そんなのは、いやだった。
ずっと私といてほしい。他の女の人のところにも、明るいところにもいかないで。
たとえそれが、ひもというカタチでも、少し薄暗い部屋で、ずっと2人で寄り添っていたい。

一人でどこかにいってほしくない。

だから、私は極力、清を女性と合わせたくなかった。
存在すら、知ってほしくなかった。

 

 

持ち場に戻ったところで、ちょうど昼休み終了のチャイムが鳴る。

デスクにつき仕事をはじめようとしたとき、ふと清のあの言葉が頭によぎった。

 

「俺を捨てないでね」

 

どうして、あんなこといったんだろう。
その台詞は、私が言うべきものじゃないんだろうか?

−もしかしたら。

私の気持ちは全然伝わってないのかもしれない。と思った。
私は行動にあらわしたり、言葉に表したりするのが下手だから、清は気づいてないのかも。

私が清を好きすぎて、独占欲の塊になってるって事。

光のついたパソコンを見つめながら、今日もまた清のことばかりを考えていた。

 



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