スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説胸に咲いた黄色い花TOP>胸に咲いた黄色い花_21

胸に咲いた黄色い花  [作者:えり]

■21

「・・・へえー」

尚は何かを考えるように、首をひねりながら階段を上っている。

そして、こちらをみながら口を開いた。

 

 

 

「あのさあ・・・それは、ペットとかじゃなくて・・・なあ。清。亜紀さんにとってお前って・・・」

 

やっと最後の階段をのぼりきる。

 

「え?何 ? 」

 

そう聞き返すのと同時に、俺は部屋の前にいる人物に気づいた。

亜紀と俺の家のドアの前に、背が高い、男が立っていた。

 

 

「え?」

 

そうつぶやくと、後ろにいた尚が、同じようにつぶやいた。

 

「あれ、誰?」

 

 

俺たちの会話がきこえたのか、男はゆっくりとこちらに振り向く。

 

目が合った。

 

ぞっとするような、冷たい目だった。

俺を、軽蔑するような目。

 

自然と、足が、震える。

 

―ああ、ついにこのときが着てしまった。

 

逃げたい気持ちをおさえ、男の目の前に立つと、すっと名刺がさしだされる。

 

「富山卓です。――亜紀の兄です」

 

 

 

俺の中で何かが、音を立ててガラガラと崩れていった。

 



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17】【18】
【19】【20】【21】