スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説胸に咲いた黄色い花TOP>胸に咲いた黄色い花_04

胸に咲いた黄色い花  [作者:えり]

■4

俺は君を照らすことができる?

 

真っ暗な森。しゃがみこむ俺と亜紀。
不安で震え続けているのに逃げもせず、ただ二人身を寄せ合っている。

このままじゃだめだと亜紀の手を引こうとする。
けれど、亜紀の体は微動だにしない。ただこちらに切ない目を向けてくるだけ。

困り果てる、俺。

――どうして、亜紀はそんな目をするんだろう。

 

 

そこで、ぱっちりと目が覚めた。
ぼーっとする頭を横に振ると、少しずつ目の前の景色がクリアになってきた。

何だ、このユメ。

まだ頭の隅に残っている夢のカケラをひとつずつ思い返すように、目を閉じた。

あの、亜紀の切ない目。
それだけが頭に浮かんでは消えていく。

「清?起きたの?」

聞きなれた声が玄関のほうからする。
首をひねってみてみると、すっかり支度を終えてスーツに身を固めた亜紀が靴をはいているところだった。

ぼやけた視界で亜紀のうしろ姿を見つめる。

「じゃあ、いってくるから。ご飯は机のうえだからね」

「え・・・」
その言葉をきいて、一気に目が覚めるのがわかった。
あわててベッドから飛び出す。
「ごめんっ寝坊じゃん俺!! 今日は朝ご飯つくる当番だったのに・・・」

「いいよ、別に。気持ちよさそうに眠ってたし。じゃ、いってくるね」

そういって、亜紀は軽くドアノブに手をかけ、扉を勢いよく開く。
まぶしい朝の光に部屋中に満たされて、思わず目を背けてしまう。

と、その間に、彼女はあっさりと出て行ってしまった。

残されたおれと壁に張られた当番表。

「はあ・・・」
その紙切れをみながら、深いため息をつく。
自分の低血圧がどうしようもなく恨めしい。

“家事は当番制にしよう!“
そう自分から言い出したハズなのに全然守れてない。
それは、この生活を始めた半年前からずっとで。

 



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17】【18】
【19】【20】【21】