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胸に咲いた黄色い花 [作者:えり] ■3 「怒ってないよ、別に。けど俺、亜紀以外にこんなこと言ったことないよ」 真顔で見つめると、亜紀は信じているのかいないのか、よくわからない顔で微笑する。 本当のことだった。今まで、好きだとか、愛してるとか、いったことはたくさんあった。 だけど、亜紀にするほど、くさい台詞を履くことはなかったし、そこまで愛する人もいなかった。 少し、体をずらして、台所で作業を続ける亜紀の後姿を見つめる。 −亜紀の魅力は決して「キレイ」なところではない。 あの、出会ったときに見た強いまなざし。そのヒトミを作る基の部分は、孤独だと、俺は一瞬で見抜いた。 だから、俺と亜紀が惹かれあったのは必然なんだろう。 そして、その分俺と秋のつながりは強いようで弱い。「陰」の部分でしかつながっていないから。 棒が通ったようにまっすぐな亜紀の背中を眺めながら、苦い気持ちで、下唇をぐっとかんだ。
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