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胸に咲いた黄色い花 [作者:えり] ■12 玄関からいつものように、声が聞こえてきた。 すると、急ぎ足のスリッパの音が廊下に響いた。 「清?」 亜紀は、少しあせった顔つきだった。 「何?」 彼女は俺の姿を見ると、表情を緩めた。 「なんでそんなあせってんの?」 「別に、あせってないけど・・・初めてじゃない」 よくわからない、といった風に眉をしかめると、亜紀は真剣な目でこちらを見つめる。 「清が、顔をみせなかったから、どこか行ってるかと思ったの。もしかしたら・・・」 そこまで言って亜紀は口をつぐんだ。 「もしかしたら?」 全く先が読めない展開に、俺の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになる。 「・・・・・・」 「・・・あー、ああ、ごめん。ちょっと手がはなせなくてさあ。それより、みてくんない?あれ」 なんとかこの気まずさをかきけそうと、台所を指差し笑顔を見せる。 彼女は不思議そうに、台所をのぞく。 「何、これ。清が作ったの?」 台所には、おいしそうなカレーがほかほかと湯気を立てていた。 「そう。すごくない?俺、料理なんかしたの林間学校以来なんだけど。ていうか、入ってきた瞬間匂いできづかなかった?」 「そういえば・・・なんかいい匂いが」 亜紀のほめ言葉ととれる台詞をきいて、自慢げに口の端を上げる。 「だっろ?いい匂いだろ」 しかし、亜紀はまだ驚いた顔で立ち尽くしていた。 「しんじらんない・・・清が?あの何にもしない清が?本当においしいの?」 「うわ、その言い方ひど。・・・たぶんだいじょうぶだってー」 そういって、台所に入り、とりあえず食べてみよう、とカレーをもう一度火にかける。 「すっげーいい感じかも」 そう、満足げに一人でつぶやく。 「はい」 すでにテーブルに用意されたお茶とスプーンの間に、カレーが入ったお皿をうまい具合においた。 「はやくすわって」 まちきれない、とばかりに強引に彼女をいすに座らせる。 「いただきます」
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