スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説月に帰る TOP>月に帰る_17

月に帰る  [作者:猫]

■ 17

そう思った瞬間だった
月が、雲の間から出てきた
この世で最も淋しい月明かりだと思った

「あ、じゃあもう、行かなくちゃ」
俺は彼女に光が当たらないように彼女を抱いて
海の家の屋根の影へ向かった
「翔??・・・もうだめだって」
ついに彼女は泣き始めてしまった
「ごめん、でも、見て欲しいんだよ」
俺は月明かりを背中に受けて
俺と屋根の影でルナに月明かりは当たっていなかった
ギリギリだった。間に合って良かった。

「俺、ルナと逢えてよかった、本当に良かった。」
彼女は黙ったまま僕を強く抱きしめた
「俺はもう大丈夫だから、心配しないで、」
めいっぱいの気持ちを伝えたかったけど、こんな言葉しか出てこなかった
「良かったよ・・・全部良かったんだよ」
そう、小さくつぶやいていた。
自分にいいきかせるように。

「ねえ、翔、朝私が何で泣いてたか知ってる??」
鼻をすすりながら、ルナは俺に聞いた

「全部聞いてたからだよ、ずっとここにいてなんて、
  ずっとここに居て欲しいなんてさ!!!」
と意地悪く笑って、言う
俺はそんな憎まれ口をたたくルナを思いっきり抱きしめた
「ルナ、ありがとう」
「どういたしまして!!」

彼女は大きく目を見開いていた、その目は俺を放さなかった
この突き刺さる眼差しに、その明るさに、優しさに、
恋をしていたんだ。

そして屋根の下から飛び出した

彼女は本当に月明かりに透けた
俺は笑顔で、泣きそうになりながら見送った
本当の別れのその間際にルナは

「月が綺麗だね」とめいっぱいの声で叫んだ。

あの夢の言葉はルナの最後の言葉だったのか、

「ずっと一緒に居られると思ってたのにな」
彼女と出会ってから日々は綺麗に過ぎて行った
いつしかそれに慣れていたのだ

俺は空虚感を感じて、淋しさを感じて、
でも、彼女が溶けていった月明かりはこの世で一番綺麗だと思った

この先、これほど綺麗な月明かりを見ることがあるだろうか。

君がいる月があるならば
光を失ってもきっと、生きていける
ひかりを見つけられる

見えなくなっても、見えるものもあるんだからと信じたい

こうしてまだ暑い夏が終わっていった。
今までで一番綺麗なものをたくさん見た夏だったきがした

=完結=


あとがき
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
途中から月=ルナにさせていただきました
だってお月様と一緒に出てこられると非常に分かりにくい><笑
間が空いて亀ペースの更新でしたが、
読んでくださった皆様、ありがとうございました。



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17】