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月に帰る  [作者:猫]

■ 11

「嫌だ、そんなの絶対嫌だ・・・」
恐怖に負けて、何も考えられなくて、俺の周りには暗闇しかなかった

誰か、誰か助けてくれ・・・
俺は一人でずっとこの闇にいるのか

「助けてくれよ」

気づかないうちに自分でつぶやいていた

気付くと、何か、暖かいものに包まれていた
優しく闇をとりはらっていくような
頭もなでられ、少しずつ回りが見え始めた

「大丈夫だよ。」

その声に、言葉に照らされていくかのように
周りが明るく、鮮明になっていった

「るな、」
「大丈夫だからね、落ち着いて」

彼女の体は俺よりも冷たく感じたけれど
たしかに鼓動は聞こえて、優しく、暖かく俺を抱きしめていた

「時々、目が見えなくなるんだ。そうするとな、どうしようもなく怖くなる。
  このまま全部見えなくなるんじゃないかって
  もっと見ておけば良かったとも思う。
  見えなくなるのがすごく怖い」

俺はゆっくり話していた、思っていたことを全て話した。
すると彼女は
「大丈夫だよ。見えなくならないよ。
  だけど、もし見えなくなったとしても見えるものもあるから、なんて、ね」
と少し照れながら言ってくれた

ありきたりな、漫画の台詞のような言葉だったけど
俺は救いの手を差し伸べられた気がして安心することが出来た

「翔は熱あるから寝てて」

風邪をひいたのは俺のほうだった。だけど彼女も体調は良くないらしい。

軽く夕飯を済ませて
それから二人でもう一つ布団を敷いて朝まで眠った

彼女は俺にとって本当に大きな、大切な存在になっている
君にとっては、どうなのかな



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