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月に帰る  [作者:猫]

■ 6

俺は店長に今まであったことを話した。
その間店長は黙って聞いてくれたことは一度もなく、
「それ本当なのか?」と俺に疑いの目を向けてきて、
俺は「すみません」と何度も謝った

本当に腹の立つ人だな。
でも無理もない、女の人が目の前で倒れて
それが知り合いで・・・なんていう嘘をついてしまったのだから。
連絡を入れなかった俺も悪いことだ。

「次回そんなことがあったら承知しないからね。
  世の中こんなに甘くないよ
  明日からまた仕事させるから。」
と、店長は冷たく言い放ち
俺は外に出て夕立が降りそうな空をみて早めに家に帰れてよかったと思った。

「ただいま」
静かにドアを開けても返事がない。
夕飯買いに行ってくれたのかと思い、少しだけ嬉しくなった。

月は不思議な女の子だった。
もう大人なんだけれど、子供っぽいところがあって
それなのに、時々落ち着きを持って俺に接して
はしゃいでいることも多いのに、ふいにとても寂しそうな顔を浮かべて
今にも目からは涙がこぼれおちそうで、
何故かその表情は俺の胸をきつくしめつける。

なんとなくいつも思っていた
月は俺に何か隠しているのではないだろうか。
何か言いたいのに言えないのではないだろうか。
俺はそれに気付いているのに
知ってはいけない気がして、いつも聞けないでいる。
優しい言葉すらかけられないのだ。

彼女のことを知りたいけれど、どうすればいい?


俺が帰ってきてからもう2時間は経っている
8時か・・・。それにしても遅すぎないか?
何してるんだろう。

そう思うとじっとしてられなくなって
家を飛び出していた。
夕立だと思っていた雨は本降りになっていた。
月は傘を持っていない。

急がなきゃ。
傘を2本持って走った。



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