月に帰る
[作者:猫]
■ 8
彼女の微かな声が雨ににじむ
「・・・え??」
「帰る場所があるの。だから、帰らなくちゃ」
よく分からなかった。だけど、寂しい言葉だということだけは
ちゃんと、理解できた
「そんな、どこに??どうして・・・そんなこと、」
「ごめんなさい、こんなこと言ったらあなたが悲しむのは分かってる
でも言わせて、もう何も話せないから、何も・・・」
俺は、どこか遠くへ、月の口からこぼれるこの上なく寂しい言葉に
軽く押されてずっと遠くへ飛ばされてしまったような、そんな気分になった
だけど月が俺が悲しむと分かった上で
言ったことだから、受け入れるしかなかった。
俺はそっと微笑んで、うなずいて、ただ彼女のそばで
肩を抱いて彼女が泣き止むのを待つしかなかった
「月の明かりが私を連れて行こうとするの」
月がゆっくりと話し始めた、何も聞けない俺は「続けて」とうなずく
「本当はね、帰らなくちゃいけないから、
今日ここから消えて帰ってしまおうかと思ったんだけど
思ったより寂しくて」
「そりゃ寂しいよ、そんなこと考えないでよ。」
「ごめんね、まだ一緒にいたいみたいで」
なんとなく、いつかは別れなくちゃいけないことが見えた
別れなんて見てなかった。
一緒に居る時間が長くなればなるほど別れは辛くなるだろう。
けど、そんな辛さよりも何故か、今は彼女を守れそうな気がしていた
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