月に帰る
[作者:猫]
■ 15
そのまま朝日が昇って
ほとんど眠ってない状態で海へ向かった
バイト先のことも気にしてなかった
今度こそクビになるかもしれない
だけど今日はそんなことよりずっと大事な日だった
俺は電車で眠ってしまいそうになった
だけど、別れが近づいている。
彼女が今ここにいるのは
一日から夜を引き算した時間だけだった
そう思うと、淋しくて仕方がなくて
どうしたらいいのか全く分からなかった
そう思いながら彼女を見てると、彼女もそれに気づいて
ふわっと笑ってみせた
そのあと、突き刺さる眼差しで俺を見ていた
いつもよりずっと彼女の眼差しは俺に突き刺さった
けど、彼女は今も彼女のままであることに違いはなかった
いつも通り会話をして、いつも通り笑って、
今日がいつも通りに過ぎていけばいくほど
彼女との別れはあまりにも突然で、辛いものになっていくのは分かっているのに。
ただ単に、楽しかった、彼女と居ると。
電車の窓から海が見えて、もう次の駅で降りるんだ。
天候は曇り、海は少し灰色だった
「晴れてなくて残念だね」
すると彼女は首を横に振って
「綺麗だね」
と言った。あの夢と同じだけど、少し違う。
けれど、君は笑ってた。
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