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月に帰る  [作者:猫]

■ 13

ルナを起こすのは悪かったから
「バイト行く」と置手紙を書いて
それで枕元においておくことにした

なんとなく、顔を見たくなって覗き込んだ
目のあたりが濡れている気がした。
「??」
怖い夢でも見たんだろうか
俺はあんなにいい夢を見たのに。

そろそろ行かなくちゃ
「行って来ます」

その日、一日中幸せだった
仕事も全く苦じゃなくて
だけど早く家に帰りたくて仕方が無かった
時間はいつも通り流れて
俺が昔から好きな夕方がやってきた
最近は家に帰る時間だから、もっと好きだった。

帰り道にあるお店で綺麗なネックレスを見かけた
すぐに彼女に買って帰ってあげたいと思った
だけどそんなにお金に余裕はなかった
そんな自分に少しがっかりしながら
いつでもいいか。と思ってなんとなく通り過ぎた。

家に着くとルナはテレビをつけていた
テレビには海が映っていた
「ただいま、」
「・・・海行きたいね」
彼女が、独り言のようにつぶやいた
「え??ああ、行こうよ。今度、行こう」
「うん、そうだ、ね」
彼女は少しずつ涙声になって、辛そうに泣き始めた。
様子がおかしかった、今朝もきっと何かあったんだ。
「どうした??何で泣いてるの??」
「ごめん、大丈夫、大丈夫だから、」
嗚咽交じりにそう答えている彼女を見て

「今朝さあ、俺、ルナと海に行った夢見たんだよ
  すっごく綺麗だった。ルナと海に行きたいって思った。」
何故か今朝の夢の話をしていた
すると彼女は声を上げて泣き始めた
しばらくして彼女はゆっくり
「・・・私もだよ、私も同じ夢見たよ」
俺は嬉しくなって、運命だとすら思えた
「でもね、違うところがあると思う。
  私が海に行ったのは朝だったの」

彼女の言葉が刺さって、俺は一瞬呼吸が苦しくなった。
俺は夜だった。とっても綺麗な月夜だった。

「翔、あのね、聞いて。私が翔と一緒に居続けるのは・・・
  だから・・・もう、さよならだよ」

俺が一番恐れていた言葉だった。



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