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月に帰る  [作者:猫]

■ 3

夢を見た。
朝になって自分は目を開けているつもりなのに
真っ暗な世界に自分がいる。
まだ夜なんだと言い聞かせるけれど
外から雀の声が聞こえる。
見えない。怖い。

俺には何も見えない。

現実の俺が目を覚ます。ちゃんと色が見える。
よかったー・・・と大きく息を吐いた
すると、誰かの視線を感じる。
大きな目がこっちをじっと見つめているのだ。
「うわあっ」
「ごめんなさい!!うなされてたみたいだったから・・・大丈夫?」
「・・・あ、そうだ。君こそもう大丈夫なの?」
「あぁ私はもう。この通り大丈夫!!」


「名前は?」
「月(るな)って言うの。」
「月・・・さん。」
すると彼女は少しふくれた顔をして
「さんはつけなくていい。そうして?」
と少し寂しそうに言った
「俺は翔。」
「じゃあ翔って呼ぶね」
俺は苦笑いをして、改めて女の子は苦手だと思ったので
「君、家はどこにあるの?」
と聞いて、なんとか帰ってもらおうとしてみたが
「遠いところ。帰ってもらいたいって、思った?」
見透かされていた。なんだこの人。
さっと月に背中を向けて
「・・・俺朝ごはん買ってきます」

「私も行っていいかな?」
背中に突き刺さった。今この人から逃げようと思ったのに。
「何にも楽しいことないよ?」
「話し相手がいないよりはいいでしょ?そう思わない?」



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