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月に帰る  [作者:猫]

■ 9

それからは何を話すわけでもなく
手をつないで、傘を差して、朝になるのを待った

どうして俺はこんなことをすんなりと受け入れているんだろう
受け入れるしかないからだろうか
もしかしたらどことなく不思議な彼女を見て
最初から分かっていたのかもしれない

柄にもないことを考えて笑いそうになった


「月、朝だよ。夜終わったじゃん」
「うん、ありがとう。これで帰れるね」

それから手をつないで帰った
彼女を月の光に当てないなんて簡単なことじゃないかと考えて
一緒にいられるような気がして



「じゃ、またバイトに行ってくるから。」
「うん。」
「昨日寝てないんだから布団敷いて寝ておけよ」
「うん、いってらっしゃい」
「いってきます」


「居なくなるなよ」とドアをしめてからつぶやいた


バイトでも時々、彼女の柔らかい笑顔を思い出して
そんなことを考えている自分を恥ずかしく思った
気づくとそればかり考えているほど好きになっている

彼女は俺をどう思ってるのかな。
恩人くらいにしか考えてないかもな、と考えてしまう
俺は聞けずにいる。思ってたより臆病なんだ

まだ、夕陽だ。
月が出たらきっと彼女は不安になる
それまでにはいつもそばに居てあげられるようにしよう

家に着くとまだ寝ている彼女を
どうしようもなく愛しく思えた、ここにいてくれたことが嬉しかった。
月が彼女を呼んでいる
でもまだ俺の近くにいる

そういえばこんな夜だった。
こうやって俺は彼女をじっと見ていて
彼女は寝息をたてて寝ていて
綺麗な月が浮かんだ夜だった。

俺と君が出会った日は



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