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ホタル  [作者:三日月 遥]

■ 第4章

その疑問は帰り際に明かされた。
校門には灯ちゃんが待っていてくれた。横には目つきが悪い女の人が立っていた。
しかもじっと睨まれていた。さらにじりじりとこっちに向かってきている。絶対に灯ちゃんじゃない。怖い。
すると後ろから人が向かっていった。

「…翼!?おまッ…」

翼はその女の人と激突した。二人とも短気なのだろう。少なくとも翼は短気だ。

しばらくの間、睨み合いが続いた。
その後ろで灯ちゃんが、こっちこっち、と手招きしていた。僕は隙をみて彼女の方に駆けていった。
灯ちゃんはぼそぼそと耳打ちした。「この隙に二人で帰っちゃおっか?」
僕は笑顔で賛成した。正確にはしようとした。でも言う前に捕まってしまったんだ、二人に。
そして翼は灯ちゃんの方へ顔を寄せてこう言った。

「河合 灯…。お前小三の時大原病院303号室、光の隣にに入院してたやつだろ。
どっかで聞いた事のある名前だと思ったよ。あのときの灯ちゃんだ!」

翼の顔が急に笑顔になった。もちろん後ろの女の人もだ。
「え?」と思わず声を出してしまった。

僕らは顔を見合わせた。そういえばそんな名前の子がいたような気がする。

「光くんって…あのとき私にホタルくれた…」

                  思い出した。

同じ病室、同じ病気、そして長い間同じ生活をした。病院という名の小屋で。

「あの灯ちゃん?マジで?」

同じ町に住んでいた事は知っていた僕が先に退院したので6年間会えなかった。
だからまたここで会えた事が何よりも嬉しかった。



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