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ホタル  [作者:三日月 遥]

■ 第2章

「母さん!!この子倒れてた子!」
母さんはぎょっとした目でこっちを見た。
そしてしばらく何も答えてくれなかった。横にあった食器ががたがたと音を鳴らしていた。
…震えてる?でも母さんは何もない風に笑って、
「かして?すぐに手当するから…。」苦笑い?そんなはずないよな…。
けれど僕は恐る恐る聞いてみた。
「母さん?知ってるのこの人?」
「ううん、しらないわよ。。。」
そうは言ったものの、やっぱり震えていた。

しばらくしてその子は僕のお古のパジャマを着てやってきた。
『男は出て行きなさい!!』と言われリビングから追い出されていたので兄と僕は自分の部屋にいた。
ちょっとびっくりした。さっきまで沈んでいた子がこんなにも変わるなんて…。
よくみると色白で髪はさらさらで目もくりくりしていて可愛らしい顔つきをしていると思う。
まあ女の子はみんなそんな顔つきなのか知らないけど。ずっと男子校だし。
…しかしよく考えてみると僕は変人だ。初対面なのにここまで人を観察しているなんて普通の人ならしないだろう。
多分どの女の子でも同じ反応をしていたんだろうな。
ぼくはそもそも女の子と関わりが無いし、話す事すら苦手なので今までに遊んだ事なんて一度もない。
僕がまだ小さいころ、ずっと入院していた時に隣にいた人と話をしていたぐらいだ。
ましてや家に連れてくるなんてもってのほかだった。

「あの…。」彼女は困った顔でこっちをみていた。
「良かったらそこすわって。とりあえずかたづけてはあるしさ。」
僕は彼女を椅子に座らせた。いくら女の子になれていないとはいえずっと立たせている事はできないから。
「ぁ…私、灯って言います!光くん…ありがとうね。」
彼女はゆっくりと僕に微笑んだ。僕もつられてゆっくりと笑った。

これが…この出会いが大変なことになるなんて思ってもみなかった。
そして母さんの震えの原因がわかるのにそう時間はかからなかったんだ。



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