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ホタル  [作者:三日月 遥]

■ 第7章

僕らは看護婦さんに連れられてある部屋に入れられた 。
「面会室」とかかれた白い部屋だ。看板の上にはほこりがかぶっていて色あせていた。

「灯さんには両親がいませんね?」

まずその言葉が飛んできた。両親は先に他界していて、今は茜さんの家に同居しているらしい。
いつだったかそんな話を聞いた事がある。
茜さんは目の色を変えずに「はい」と答えた。まるでマニュアルのように。
看護婦さんは大きくため息をつき、僕らをにらんだ。

「河合 灯さんは急性白血病です。両親がいないならこのまま安楽死させます。」

安楽死。これが病院の一番やりたいことだ。白血病は骨髄の型が一致しないと治らない。
親も兄弟も身よりもいない彼女と一致する人を探すのは不可能に近い。
不幸なことに灯ちゃんはとても珍しい血液の型で一億人に一人くらいの型らしい。
つまり、手術は無理、ということだ。
それでも念のために血液を採取してもらい、調べてもらった。
結果は明日。無理なことはわかっててもこのまま死ぬのはやだ。
僕が死ぬわけでもないのに明日命がつきてしまうような気分になった。


その時病院では、医者全員が驚いていただろう。
だってその頃は誰も知らない、気づいてなかったんだから…



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