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ホタル  [作者:三日月 遥]

■ 第10章

「一致って…それってどういう事だ?」
翼が看護婦の胸ぐらを掴んだ。
翼の瞳には怒りがあふれている。
べつに、助かって嬉しくない訳じゃない。
嬉しいのは嬉しい。そりゃ、助かることが一番いいに決まってる。
でも…。
「前に家族がいないから一致する人はいない って言ったよな?
  なのに何で光が一致なんだ?赤の他人なのに?」
翼も僕も泣きそうだ。
そこまでバカじゃない。もう言わなくても少しはわかってる。
            僕らは   血がつながってる。

「兄弟の可能性があります。いえ。何かの事がない限りは100%言い切れます。」

翼の手が看護婦のシャツから離れる。
そしてゆっくりと床に膝をついた。

「う…そ…だろ?」
もう最初の勢いはなくなっていた。
僕も目の前が真っ暗になった。

せっかく巡り会えて、通じ合ったっていうのに。
神様は勝手すぎる。もう少しこの世界を楽しませてくれたっていいのに…。

その事実を知った以上、僕はある決断をしなければならなかった。
  ーーーー灯ちゃんに知らせるか知らせないか。ーーーーー
    そして、手術をするかも。
知らせた方がいいだろう。
知らせない方がいいだろう。
もう…わからない…。

「手術は…します。それまでは彼女には知らせないで下さい。」

口が勝手にそう言った。



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