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ホタル  [作者:三日月 遥]

■ 第14章

僕はふと時計に目をやる。
ーーPM11:30ーー
…。翼を呼ぼうか。それとも茜さんか。

やっぱりやめておこう。
二人も今日はショックを受けているに違いない。

僕は自転車置き場へ向かった。
身長のわりに大きい自転車。
ハンドルを握りしめ、ペダルを思いきり回す。
前が見えにくい。
車もこの時間になると少なくなってくるため道を照らすものは無くなる。
そのため、今は家の電灯くらいが灯りの頼りだ。

本来ならライトをつけた方がいいがあえてライトはつけないことにした。
それは、僕の心の中に「病院なら明るいはずだ。」と、

そんな思いがあったからだ。
急げ、灯ちゃんが待っている。

たまに車体が持ち上がる。
小石などを踏んだせいだろう。

足にあたる葉っぱが冷たい。
ツユクサだ。
ホタルはこのツユクサが大好きなんだ。
よくここのツユクサを取ってきてビンに入れていた。
ホタルを捕まえて。

懐かしいにおいがする。
夏の川のなまぬるいにおい。
けしていいにおいではないけれど、好きなにおいだ。

もう病院が見えてきた。



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