スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説あじさい通りTOP>あじさい通り_08

あじさい通り [作者:ぽわん]

■8

〜人なんて もう絶対 信じない・・・〜
そうもう一度誓った昨日。1人なったあの時の言葉と君の涙。
光も、心も、時も
もう何も必要ないって思った。
そして今も・・・。

走れ、逃げろ、急げ・・・。
弁当を広げ、周りの皆が笑顔で昼食をとるなかで、
僕はふたたびひたすら廊下を走っていた。


陽菜はやはり一度も今日は僕のもとに来なかった。
食欲もなく、廊下をうろついていると、あの大男と会ってしまったのだ。

「おいおいチビ、久しぶりに会ったのに、逃げることはねぇだろぉ!?
今日はお前の大好きな陽菜ちゃん、いないんだな!!」

後ろで大男が叫んでる。大男の周りでは、うじゃうじゃと小人が笑ってる。
やっぱり小人の中にいる、同情した目のあいつは、黙って僕を見てる。

殺されるかもしれない・・・。今日こそ死ぬかもしれない・・・。

だけどもう、それもどうでもよくなっていた。 
僕は足を自らとめた。

ヒョイっと小さな僕の体は大男に持ち上げられた。


「おっ、今日は逃げないのか。ずいぶんお前のこと殴ってないしなぁ?久しぶりに
殴られたくなったか?」

どうでもいい。陽菜が来る前はひとりでもまだ平気だったのに、今の僕は陽菜がいないという
だけで、自分の命さえどうでもよくなっていた。

「殴るなり、殺すなり勝手にすればいい!!」

そう言って僕は大男を睨みつけた。

「いい度胸じゃねぇか・・・・・・。」

小人が笑う。通りすがりの人間が僕をジロジロと観賞する。
続けて大男が嘲笑いながら、拳をにぎりしめ振りかざした。



「やめてください!!!!!!」



昼の校舎の廊下に、甲高い声が鳴り響いた。大男の手が止まった。
聞き違えるはずがない。
空耳なんかじゃない・・・・・・・・・陽菜だ。


大男と僕の目は、一人の女の人に集中した。
陽菜はゆっくり多少ふらつきながら、初めて出会った時よりも、もっと青い顔で
歩いて僕と大男の近くまで来た。目が少し充血している。本当に今にも倒れそうだった。
思わず、僕は口を開いた。大男はつかんでいた僕の腕を放した。

「陽菜・・・・・・どうして・・・・・。」

「言ったじゃ・・ないですか・・・。お友達になるって。友達を・・助けて、何が、悪いんですか・・・?」

「陽菜・・・・・・。」

「美しい友情ってやつかぁ?陽菜ちゃんもいい加減にしてくれよぉ?」

「いい加減に、する方は、あなたです・・・・!馬鹿にしないで、くださいっ!!」

「陽菜、もういいから!!」

本当にこれ以上何か言えば、陽菜が倒れてしまいそうだった。

大男が真っ赤な顔で叫ぶ。

「多めに見てやってりゃ調子にのりやがって、この馬鹿女が!!!聞いたぜ?俺の親父からよぉ。」

「やめてくださいっ!!それ以上言わないで!!!」

陽菜がよろめく。僕はとっさに走って陽菜の腕をつかんだ。

大男が歯をむきだして言った。



「お前もうすぐ死ぬんだってなぁ!!!!!」



陽菜が言葉にならないような叫び声をあげてしゃがみこんだ。


「あんまり乱暴したら死ぬかと思って遠慮してきたんだぜぇ?俺に感謝しろよなぁ!?」


頭の中が燃えるように熱くなる。全身から何かが湧き上がってくる。

その何かは、すべて僕の拳に集中していった。



次の瞬間、僕は大男の顔をめがけて走り出していた。



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】【14】【15】