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あじさい通り [作者:ぽわん]

■7

裏切られてきたんだ、何度も。
あいつにはじめて裏切られた時から、そのあとも。

僕に同情なんてして、近寄ってくる人間が何人かいた。
だけどみんな、僕が殴られてるのを見ると、静かに去っていったんだ。
僕を一人置いて。

ずっと重い扉を押し続けてきたんだ。
次は開けられるかな。今度こそ開けられるのかな。

だけどいつも最後は、ガチャンと大きな音をたてて、閉まってしまう。
もう進めない。

今回やってきた女の子は、本当に信じられる気がした。
だけど、あいつの目を見ただけで、あの日、あの時の悪夢がよみがえってきたから・・・・・・。

やっぱり進めない。


目の前にいる背の高い女の子は、ただ静かにじっと僕を見ていた。

「だからもう、僕の目の前から消えてよ・・・・・・。」

「・・・・・・どうしても、どうしても信じられませんか?」

「どうしても。」

「命をかけるといっても?」

「うん。」

「本当に?」

「うん。」


陽菜の目には、涙があふれていた。

「・・・・・・じゃあ、雨がふりそうなので、帰ります。」

「うん。」


さようなら、陽菜。 ごめんね、陽菜。


ゆっくり歩く陽菜の後姿を、僕は黙って見ていた。
ドラマだったら、追いかけて抱きしめたりするんだろうけど、
そんなバカみたいなこと、できないし、する意味もなかった。

雨を知らせるような、どんよりした空気が街をつつみこむ。
やがてそれは、小さな雨粒となって、僕の全身を濡らした。

明日からは、また陽菜が来る前の日常に戻るだろう。
もう、何も必要ない。



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