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あじさい通り [作者:ぽわん]

■9

ドゴッ!!!!!!!


骨を拳で押しつぶすような音が廊下に鳴り響いた。

僕の拳は何も衝撃を受けていない。

それどころか、僕の拳は宙で止まっていた。

目の前には、大男をとりまく、小さい小人の一人・・・・・・

ずっと黙って見ていた・・・・・・浩司がいた。

浩司の拳は真赤だった。 浩司の前にいる大男が頬おさえて立ちすくんでいた。

何が起きたのかわかるまで、数秒かかった。

「・・・・・・浩司・・・・・・・?」

振り返って、浩司が僕の目をみた。

「これで今までやってきたこと、許せなんて言わないよ・・・・・・。今まで、本当に
ごめんな・・・・・・。俺やっぱ弱くてさ。殴られるのが死ぬほど怖くて・・・お前のこと
裏切ったんだ・・・・・・。裏切った後、俺もすごく辛かったんだ。
本当にごめん。もう二度と、裏切らないから・・・・・・。」

「浩司・・・・・・。」

重い扉がいま、本当に開けられそうになった。

だけどそんな時間はないようだった。大男の目が殺意を感じるほどの目で僕と浩司を睨んできた。

「お前ら全員、ぶっ殺してやる!!!!!!」

大男の手はすぐに浩司の服をつかみ、頬を思いきり殴った。

「浩司!!!」

助けようと、僕は必死に大男の腕をつかんだ。

血を口から流しながら、浩司が叫ぶ。

「バカ!!お前は陽菜ちゃん連れて逃げろ!!」

「でも!浩司お前一人・・・・」

「ぐだぐだうるせぇぇ!!!!」

大男はまた浩司を殴りつけた。



浩司の目を見る。

「行け!!!」

浩司の目は、確かにそう言っていた。



僕は周りの小人を蹴り飛ばして、しゃがみこんでぐったりしている陽菜をおんぶして、
廊下を思いっきり走り出した。



1階まで下りた時、三原先生と、数学教師の村山先生が保健室からでていくのが見えた。

「三原先生!!!」

「あなた、この間の!?・・・・陽菜ちゃん!?ちょっと、どうしたの!?」

「大丈夫です!それより、三原先生、陽菜の教室・・・あの3組の廊下に行って!!!」

「なんだその言い方は!ちゃんと理由を言え!!もうすぐ昼休みもおわるんだぞ!?」

なぜだか村山が答える。こんな会話をしてる間にも、浩司は殴られているのに・・・!!

「だから友達が・・・・!!!」

「・・・・・・わかったわ!陽菜ちゃんのこと、頼んだわよ!!」

怒鳴り口調で村山に言い返そうとした瞬間、三原先生が言った。

三原先生はものすごい速さで、階段を駆け上っていった。

僕は茫然と立っている村山を残して、ふたたび走り出した。



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