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あじさい通り [作者:ぽわん]

■1

〜人なんて もう絶対 信じない・・・〜
そう誓ったあの日。1人なったあの瞬間。
光も、心も、時も
もう何も必要ないって思った。
そして今も・・・。

走れ、逃げろ、急げ・・・。
弁当を広げ、周りの皆が笑顔で昼食をとるなかで、
僕はひたすら廊下を走っていた。

「おいチビ!!待てよ、てめぇまた殴られたいのか!?」

後ろで大男が叫んでる。大男の周りでは、うじゃうじゃと小人が笑ってる。
一人だけ小人にまぎれて、僕に同情したような顔の小人がいるけど、そん
な奴、今はどうだっていい。
今日こそ殺されるかもしれない・・・。今日こそ死ぬかもしれない・・・。

走らなきゃ、走らなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!!!

だけど足の回転がだんだんと遅くなる。グルングルンと頭の中で血がまわる。
体中が熱い・・・足がもつれる・・・・・・。もうだめだ。。。
ヒョイっと小さな僕の体は大男に持ち上げられた。

さぁきた。さぁくるぞ。さぁどうする・・・。
歯をくいしばった方がいいだろうか。鼻を折られたらどうしようか。
そんなことを考えてる間に、大男は早口でしゃべりだした。

「おいチビ、てめぇ俺に今ガンつけたよな?文句あるなら口で言えよ?なぁ!?」

言ったところで僕の死刑台送りは決まっている。だけどここはまだ学校内・・・。
殺されずにすむかもしれない。僕はとりあえず顔を横に振った。
小人が笑う。通りすがりの人間が僕をジロジロと観賞する。
続けて大男が嘲笑いながら、拳をにぎりしめ振りかざした。


ドゴッ!!!!!!!


「うっ・・・・・・」あまりの衝撃の強さと、骨を拳で押しつぶすような音で、僕の
声が体の奥から漏れてきた。
「こんどガンつけやがったら・・・わかるよなぁ?」
大男は僕を手から放し、小人たちとわざとらしく笑いだした。
「ごめんなさい・・・・・・。」
感覚のない頬を抑えながら、なるべく口を動かさないようにして僕は返事をした。

その時だった。

「なんですか、今のはっ!?」

大男と僕の目は、一人の女の人に集中した。
彼女はロングヘアーで今にも倒れそうなくらい青白い顔をして、
だけど目が大きくて、清く正しく美しくという感じの、
とりあえずとても綺麗な人だった。

「なんですか、今のは、田橋君!!!」

彼女はまたもや大男の名前まで呼んで怒鳴った。
・・・怒鳴るというほど迫力はなかったけれど・・・。
だけど大きい目はギッと大男の目を睨みつけていた。
しかしどうしよう、大男は女だからって容赦しないやつだ。
一昨日、大男が俺に食ってかかろうとした時、ジロジロ見ていた女の子を、
大男が怒鳴りつけていたのを思い出した。

「・・・悪かったよ。だからそんなに怒るなよ、陽菜ちゃん」

・・・・・・・・・・・・・ん? 
僕は一瞬自分の耳を疑った。
殴られたショックで耳の中を破壊されたのかと思ってしまったほどだ。
だけどそれは間違いなく大男の声だった。
彼女の名前は、「陽菜(ひな」というのか・・・いやそんなのはどうだっていいんだ。
大男がこんな青白い女の子にたじろくなんて・・・・・彼女はいったい何者なのだろうか・・・。
そんなことを考えている間に、大男は小人を連れて立ち去って行った。

「大丈夫ですか、泉くん・・・。私の声聞こえますか?・・・痛かったでしょう?一緒に保健室に行きましょう!!」

今思えば僕より身長が10pほど高い彼女が、僕の腕をひっぱってそう言った。



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