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春の歌  [作者:三日月 遥]

■第2章

「えー?なお君東京行っちゃったのぉー?」

みんなは彼が東京に行ったことを知らなかった。
教えていなかったんだろう。
彼はそういう別れ際をとことん嫌っていた。
だからあえて“彼女”である私だけを呼んだのだろう。

あれから私も大学に入り、普通に勉強していた。
彼のことは「知らない?旅行じゃないの?」と言っていた。
知られたくなかったから、ずっと隠し通すつもりだったのに。

クラスの言いふらしや、情報屋のさっちゃんが情報を仕入れて私に聞いてきた。
それがさっきの出来事だった。

私は彼女たちに言った。
「私には関係ないよ。」と。

私たちは秘密でつきあっていた。彼は後輩からも人気がある。
彼は「春菜がいじめられるのは俺も嫌だ。だから、秘密にしていよう。」
そういった。
春菜は私のこと。ちなみに彼は尚行(なおゆき)、なお君だ。
だから、二人でいられる時間は私たちの宝物だった。

はっきり言って私たちはつり合ってなかったと思う。
私は目立たない方で、友達も少なかった。
彼はその真逆。彼の周りにはいつも人が絶えなかった。
うらやましかった。



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