スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説春の歌TOP>春の歌_08

春の歌  [作者:三日月 遥]

■第8章

それは、突然の知らせだった。
悲しみよりも、絶望よりも先に、驚きを隠せなかった。
声も出なかった。
彼は下を向いたまま、黙ってうなずいた。

そして彼は「これ…。誕生日に渡せなかったヤツだけど…。」
と言ってポケットの中からネックレスを取りだした。
「春菜って名前からして春のイメージだろう?なかなかなくて必死に探したんだぞ?」
それは桜の花と葉っぱをモチーフにしたヤツだった。
ピンク色の金属が揺れている。
彼がプレゼントをくれたのははじめてだったから嬉しかった。
けれど、何で今なんだろう。
せんべつのつもり?
それでごまかそうとしてる?
私はうつむいて「いい。」と言った。
なお君は驚いていた。
あからさまになんで?って顔をしてた。
私はネックレスを彼の手から奪い、近くに投げ捨てた。
そして「なお君にわたしの気持ちなんてわかんないよ!!」と吐きゼリフを言って教室へ駆けていった。

それから何日経っただろう。
すれ違っても目も合わせないし、一日が終わった気がしない。
何でだろう?
ぼーっとした毎日を過ごしていた。

そんなある時、私のもとに一人の老婆が訪ねてきた。
この人は何度か小さい頃に会ったことのある人だ。
確か…近くで農業をしている人だ。
その人は偶然田んぼの中でなお君のネックレスを拾ったらしい。
このあたりで春菜は一人しかいないから、と言って渡してくれた。
なんでわかったんだろう?

わたしはその人にお礼を言うとネックレスをくまなく調べてみた。
すると、葉っぱが横に開いた。
ロケットペンダントだったらしい。
中には「Haruna」とローマ字で書いてあった。

しかし、しばらくして桜の花びらが1枚ないことに気づいた。
私はジャージに着替えて田んぼに探しに行くことにした。
もう日が暮れかけていた。
見渡す限りオレンジ色の町だった。
でも構わず走った。
お母さんには遅くなる、と言った。



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】