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春の歌  [作者:三日月 遥]

■第5章

「ちょ…何してんの!?」
私は勢いで彼を突き飛ばしてしまった。
嫌じゃない。

でも顔が熱い。

恥ずかしいとか、そんな気持ちじゃなくて。

ふと、彼の目を見る。
彼は目の色一つ変えずにこちらを見ていた。

そして、「帰ろう。もうみんな帰っちゃったよ。」と小声で言った。
彼は少し泣きそうな声をしていた。しかも背中を向けてしまった。
これじゃ顔が見れない。

私は“少し、悪い事をしたかもしれない”。と後悔していた。

どんな事があっても彼を突き飛ばしたりなんかするんじゃなかった。
彼の気持ちを踏みにじってしまったかもしれない。


帰り、彼は家まで送ってくれた。
でも一言もしゃべらなくて、肩が、胸が重かった。

その日、家に着いてからはは、私の大好きな彼からの着信音は一度もならなかった。



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