一杯のコーヒー [作者:新藤 アキ]
■第1章−4
「はぁぁぁ・・・・・・疲れたっ。どれくらい歩いたんだろう・・・・・・?」
ユーリの店からはずいぶんと歩いた。
1時間、もしくは1時間30分は歩いているだろう。
時折吹く、小さな風にボクの少し長い髪が揺れ、首に当たる。
「どこ行こうかなぁ・・・・・・」
と、つぶやきながら、見つけたアパートに近づき、インターホンを押してみる。
この動作を、何回繰り返しただろうか。
「はい、なんでしょうか?」
中から、優しそうなおばあさんが顔を出す。
ボクは、さっき行ったアパートの大家さんに言った言葉と同じ言葉を口にした。
「あの、空いている部屋、ありませんか?」
「ごめんなさいね、いっぱいなの。他をあたってくれるかしら」
「わかりました。ありがとうございました」
この言葉はもう、心などこもっていない。
ただ単に、ロボットのように繰り返すだけになっていた。
「ユーリの所にいれば早かったなぁ」
はぁ、とため息をついて、ある店のガラスに寄りかかったとき。
「ねぇ、ユーリって、可愛いけど、全然うちらの相手してくれないよねぇ…・・・」
えっ・・・・・?
「だよねぇ!何か、男の子に対しては優しいのにさ、うちらには全然興味持たないの!!」
嘘、でしょ?
「あーゆーヤツはモテないって!絶対!だってさぁ、話さないんだよ、男の子としか!」
そんな・・・・・・わけ・・・・・・!?
↓目次
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