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一杯のコーヒー  [作者:新藤 アキ]

■第1章−2

チリン・・・・・・

小さく、かわいらしい音が店内に響いた。

「おじゃましま・・・・・・す」

「あ、あれ私の姉。シュウ姉ちゃん」

「・・・・・・どうも。・・・・・・ユーリ、その子の服濡れてるけどどうしたの?ユーリ、持ってた如雨露(じょうろ)の中の水で濡らした?」

図星だったらしい。ボクの後ろにいるユーリは顔を赤くして下を向いていた。
シュウ、と呼ばれたユーリの姉はボクの大きなカバンを持ってイスに置き、隣にあったイスをひいた。ボクが座るためだろう。

「ありがとうございます」

小さくお辞儀をして、ひいてくれたイスに座る。
大きなカバンが落ちそうになったので、すぐに気付いてイスにもう一度乗せた。

「シオン、紅茶とコーヒー、どっち飲む?」

いつの間にか着替えていたユーリがボクに話しかけた。
着替えたユーリの服は、白いワイシャツに少し暗い赤色のゴムで髪を結び、袖のない首元が大きく開いた紺色のセーター、濃い茶色のズボンに、モカ色の腰からのエプロン。
まさに、カフェの店員、といった感じだった。

「うーん・・・・・・じゃあ、コーヒーで」

「砂糖は?」

「小さじ二杯くらい。あ、ミルクは入れなくていいよ」

「わかった、ちょっと待っててね」

コーヒーが来るまで少し時間があったので、大きなカバンの中からギターを取り出し、小さな音で弾きはじめる。
シュウはギターに興味をとても持ったのか、足音を立てないように静かにボクのほうへと歩いてきていた。

「・・・・・・着替え、持ってきたから。カーテンで仕切られてる所あるでしょ?あそこで着替えてきてもいいけど」

「あっ、はい。ありがとうございます」

何故か年上には敬語になってしまうボクを少し不思議に思いながら着替えに行った。
着替え終わって、イスに座ったときにはもうコーヒーは置いてあった。

「ユーリ、ありがとう」

「シオンのためだから美味しいコーヒー豆使ったからねっ♪」

「うん、やっぱりおいしいよ」

「やったー!」



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