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仲良し  [作者:ぽわん]

■ 8

・・・翌日・・・

  今日は朝から雨だった。じめじめした空気に包まれて、1時間目の授業から
どうもやる気が起きなくて、お得意の睡眠授業となった。

「・・・ちっ、まだ降ってるのかよ。」

雨のせいで部活が中止になって、睡眠授業をした俺への罰に、先生が大量の課題
プリントを出してきたので、今日は早く帰ることにする。黄色い傘を取り出して、バッと広げる。

「あっ!」

「あ・・・・・・」

隣に優奈がいた。お互い今まで気づいてなかった。遠慮したような口調で優奈が
先に口を開いた。

「えへ。久し振り・・・だね。」

「そうだなぁ。」

「元気してた?」

「まぁな。」

「あのさぁ、私が先輩と付き合ったからって、遠慮しなくていいんだよっ?草平と話す
の楽しいしさぁっ!今まで通り、仲良しでいようよっ、ねっ!!またトマトも欲しいし!」


  俺の気持ちも、何も知らない彼女の残酷で優しい言葉に、俺はゆっくりと笑顔でそっと
返事をした。

「うん、わかったよ。」

「あはっ、よかったぁ〜。ほっとした!嬉しい!!・・・あっ、その黄色い傘!草平が小学
生の時から、ずっと使ってた傘だよねぇ。私の傘はピンクでさぁ。草平ってば、私が黄色大
好きなこと知ってるくせに、絶対貸してくれなかったよねぇ〜。」

「よく覚えてるな、そんなこと。」

「何忘れてたの!?私悔しくて泣いて帰ったんだから〜。何がそこまで悔しかったのかわかん
ないけどさぁ〜、あははっ。でもその傘、まだ使ってたんだねぇ。」

「ははっ」

  優奈との思い出なら、お前よりずっと俺の方が覚えてるよ。
そう思いながら俺は笑った。すると優奈が突然玄関からでて、外へ走って行った。手のひらを
空の下にだして、振り返って叫んだ。


「雨やんだよ〜っ!!」


声を追いかけるように走りだそうとすると、それより先に、俺の横をすっと男の人が走って行った。

「草平、また明日なっ!」

静かに俺の足の動きが止まった。 あぁ、先輩! と嬉しそうに言う優奈の声が聞こえた。


「ばいばいっ、そーへーっ!!!」

そう言って彼女は笑顔で手を振り、雨上がりの切れ間から射しこむ、眩しい日の光の中に
走っていった。

                     キラキラ キラキラ


眩しさで俺は目を細くしながら、黄色い傘をたたんだ。ゆっくり歩いて、空の下へ出ると
雨上がりの太陽は、そっと街と俺の気持ちを洗い、そして優しく包み込んでくれた。


                 太陽の光の暖かさの中から生まれた言葉は

                         「恋」

                  というたった一文字の言葉だった。

              俺はそれに気づくのが、笑ってしまうほどに遅かった。

                  そして 彼女も今 恋をしている。

                それでもなお、彼女のそばにいたいというのは、

                     俺のわがままだろうか

                   これからも ずっと 永遠に

                       俺は 君の

                       「仲良し」

             でいたいんだ。小さなひまわりをずっと見ていたいんだ。

                  だけど 確かに 言えること。

                     「あれは 恋だった」



↓目次

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