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仲良し  [作者:ぽわん]

■ 4

それからというものの、俺は隆広先輩にたくさんのことを教えてあげた。
もちろん、優奈がいない時に。

優奈の好きな食べ物・・店・・色・・花・・。長年一緒にいると、いやでも
覚えてしまっていた。俺が教えるたびに、先輩は嬉しそうに聞いていた。

そういえば、先輩が優奈を好きだとわかった日から、優奈とはあまり話していない。
あいつのバカみたいにはしゃいでる声が聞きたいなぁ・・と無意識に思った。

  ある日曜日の夕方だった。

  母さんが、庭でトマトをとってこいというので、ざるをもって庭に出た。
しゃがんで、真赤でうまそうなトマトを選んで、ざるに一つずつ入れる。夕方だというのに
まだ日差しが眩しい。


「わーいトマトぉぉ!!私にも一個ちょぉだい!!!」

上からバカみたいな声がした・・・。優奈だ・・。

「お前何しにきたんだよっ、勝手に庭まで入ってくんなよっ」

バカみたいな声を久しぶりに聞いて、自然と笑いがこみあげてくる。

「何よ、来ちゃ悪い!?最近、草平と話してないからさぁ。来てあげたのっ」

「わかったよ、やるよトマト・・・」

ゆっくりと立ち上がると、優奈は薄黄色のワンピースを着ていて、白いサンダルを
履いていた。小さい足・・・。俺よりずっと小さい・・・。そうだよな。優奈だって
女の子・・なんだよなぁ・・。
熟れた赤いトマトを片手に、俺は小さな女の子のサンダル履きの足指に、見惚れていた。

「・・・どうしたの?」

不思議そうな顔で優奈が言った。

「別に・・ほらトマト」

「ありがとぉ!!・・・あっ!!あれ、ひまわり!?去年一緒に植えたやつだよね!?」

庭にある小さな池の横に咲く、まだ小さなひまわりを指さして、優奈が叫ぶ。

「ちゃんと咲いたんだぁぁ!!きれいだねぇー。私、ひまわり大好き!」

「優奈、黄色好きだもんな」

「おっ、そうだよ!知ってたんだねぇ。」

「・・・知ってるよ・・お前のことならなんだって・・・。先輩より・・俺の方がずっと・・」

「えっ・・?」

・・・やばい!! 一瞬そう思った。何を言ってるんだ、俺は。

「先輩って誰?なんの話?」

顔がカッと熱くなる。自分が耳まで真っ赤になってしまう気がして、とっさに叫んだ。

「うるせぇ!!いつまでも人の庭入り込んでるんじゃねぇよ!早く帰れよ!!」

優奈の顔が、一気に曇る。

「何よ、急に怒り出して!わけわかんない!!わかったわよ、帰るわよ!!」

小さな足が地面を蹴って、俺の横を一瞬で通り過ぎる。
ひまわりが、俺をバカにするようにゆらゆら揺れている。
太陽はもう、沈みかけていた。



↓目次

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