スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説仲良しTOP>03

仲良し  [作者:ぽわん]

■ 3

  それから昼から放課後になるのはあっという間だった。午後の授業は全く
聞く気になれず、睡眠授業となってしまった。・・・美樹のアホがわけの
わからないことを言うからだ。そうに決まってる。

ふと教室の時計を見ると、針は午後3時半をさしていた。

「今日は筋トレの日か・・・」

頭をグシャグシャとかきながら、とりあえず陸上部が全員集合するグラウ
ンドへと急ぐ。優奈の顔が一瞬頭をよぎったが、気にしないことにした。

  ジャージに着替えてグラウンドへ行くと、まだそこには隆広先輩と、俺
の午後の授をが睡眠授業にした原因の美樹がいるだけだった。隆広先輩は
陸上部の部長で、足も速く、頭もよく、ルックスも完璧だ。そこまで完璧
なのに、嫌味なところもないし、逆に部を明るくするようなおもしろい人
だったりして、俺は隆広先輩のことは色んな意味で尊敬している。

「ちわっす、隆広先輩。」

「・・・おっ!?草平かぁ!ちいっす!!」

陸上部員の100メートル走のタイムの記録ノートに目をこらしていた先輩
は、俺が来たことにたった今気づいたようだった。美樹はまた俺の顔を見て
ニヤニヤしてきたので、無視しといた。

  太陽の光が雲で隠れた時だった。

「草平!!たのむ!!部長の一生のお願いだっっ!!!」

そう言って先輩が、勢いよく俺の両肩を両手でガッシリつかんできた。

「先輩が一生のお願いってよっぽどですね、なんすか?」

先輩の必死な顔が少しおかしかったものだから、俺は苦笑しながら答えた。
美樹はさっきよりニタニタしている。


先輩の頬が少し赤くなったかと思うと、先輩はため息をついて言った。


「俺さ・・・優奈ちゃんのこと好きなんだ・・・。」


・・・・・・・優奈と一番仲のいい俺に、優奈のことをいろいろ教えてほしい。
それが先輩の一生のお願いだった。俺は全く何も考えずに「いいですよ」とだけ
答えた。先輩の顔は、たった俺のその一言だけでほころんでいた。
隣で美樹が「・・・本当にそれでいいのぅ?」と小声で言ってきたけど、断る理
由もないじゃないかと思った。
  だけど、先輩の嬉しそうな笑顔と裏腹に、俺は曇ったような顔になっていた。

太陽の光はまだ、雲の中に隠れていた。



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