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名前をつけてやる [作者:優]

■ 第4話

次の日の朝、教室に入ると自称“恋のキューピッド”の田口が近づいてきた。

「よぉ片山。昨日は楽しかったか?ちゃんと告白しただろうな?」

俺は田口から目線をそらす。田口が驚いた声で「言ってないのか?」と聞いてきたので、それには無言で合図する。
もちろん「言ってない」の合図だ。

「お前、昨日部活無かった分、時間はたっぷりあっただろうが!なのにチャンスを逃すって…。
…バカ!お前頭いいくせにバカ!いったい昨日は何話したってんだ?あぁ!?」

田口がずい、と迫ってきた。正直、怖い。
…話すか。最後まで話すとまたへこみそうなんだけど仕方ないな。

そうして昨日の会話を淡々と話していった。最後に俺がへこんだことを言い終えると、田口は急に俺の肩をつかんで叫んだ。

「片山、今ならいけるぞ!駅前のくす玉も割れる!」

「…はぁ?」

「きっと小町はそのときお前に告ってほしかったんだ!だからわざわざ恋愛話なんか持ち出して…うんうん、乙女心は難しいねぇ。
…よし、片山、今から告ってこい!きっとあいつも待ってるぞ!くす玉を割ろうぜ!」

「駅前にくす玉は無ぇよ。それに、あいつが待ってる?…絶対に、無い」

「くす玉は俺なりの表現だよ。…いいか片山、よーく考えてみろ。
もし自分が彼女だったら…なんて話、好きでもない男に言うか?いいや、小町は言わねぇな。
それに最後の言葉には、小町の片山の彼女になりたい、という意味が込められていると見た!」

「なんか、都合よすぎね?」

「キューピッドに間違いは無い!」

「ふーん?」

「あ、信じてねえな!?…よーし、お前に1つ良いことを教えてやろう。キューピッドのお告げだ。
いいか?次の次の土曜日…つまり8日後だな。女バスの練習試合があるんだ。
それに小町は出るぞ!この間3年は引退したからな、今のメンバーでは初の試合だ!」

「それは良かった」

「…お前俺の言いたいこと分かる?小町の応援してやれってことだぞ?
あいつ、俺がエール送ったときもニコーっとして嬉しそうだったぞ。応援したら好感度アップだって!」

「お前エール送ったの?」

「ヤキモチ焼くなよ。ただ、もしその試合で1人で40点取れたらくす玉割ってやるって言ったんだよ」

こいつ、くす玉の表現好きなんだな、と一瞬どうでもいいことを考えてしまったが大人しく田口の助言聞くことにした。
試合の前はほとんど毎日練習に付き合わされる。多分今日も誘いに来るだろう。
そのときさりげなく言ってみよう、と思っていたがいつまで経っても小町から声をかけられることは無く1日は終わってしまった。

土日が終わって、月曜日に入り火曜日になっても小町からの連絡は一切無かった。
それどころか、田口さえも小町のことを話さない。明らかにおかしい。

「…お前、何か知ってんのか?」

田口はしばらく黙り込んだあと、ぼそりと「小町、怪我した」と言った。

↓目次

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