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名前をつけてやる [作者:優]

■ 第5話

そのことを聞いたあとすぐ小町のところに飛んでいこうと思ったが、すぐ止めた。
小町は俺を避けている。そう思ったからだ。
…俺は小町の何なんだ…

そう悩んでいる内に金曜日の夜になっていた。
いつの間にか部活から返り、自分のベッドの上でうたた寝をしていたらしい。毛布を掛けていなかったので、少し寒い。
携帯を見るとメールが来ていた。

「…えっ」

メールは小町からのものだった。慌ててメールを開く。

「久しぶり。今日の8時にマンモス広場ね。すべり台のとこに集合だから。」

相変わらずの一方的な誘い方に苦笑いする。しかしそれに安心している場合ではない。
8時まであと10分しかない。俺は大急ぎで着替えて、自転車にまたがった。

――7時57分。なんとか待ち合わせに間に合ったようだ。
自転車を止めて小町のいる像の形をしたすべり台のほうへ進む。
小町を見つけ、久しぶり、と声をかけた。小町は笑顔で答えた。
そのあとはお互い何も話さなかったが、ふいに小町が口を開いた。

「…急なんだけどね…あたし、この間怪我しちゃったんだ。部活でこけちゃったの。
…でね、本当はバスケしたかったんだけど、病院で我慢しろって言われてね、」

「うん」

「あの、片山の顔見ると、どうしてもバスケしたくなるから、その…ずっと、避けてたの…」

「うん」

「ごめんね…。怒ってる?」

「怒ってないよ」

怒ってなんかいない。とても寂しかったし、たくさん悩んだけど、もういい。すべて許してやろう。

「また、バスケできるんだろ?」

「もちろん!明日の試合さえ我慢したらいいの!…田口っちゃんの言ってたくす玉は割れないけど、いつか割ってやるんだから。
また練習にも付き合って貰うからね!」

いつでも付き合ってやるよ、と言って俺は微笑んだ。小町もとびきりの笑顔を俺に向ける。

「片山怒ってなくて良かったぁ。
ね、久しぶりに会ったからもう少し雑談してようよ」

「そうだな。実はこの一週間で田口の爆笑エピソードが溜まってんだよな」

「聞きたい聞きたいっ!じゃあ、ここは風があるから…ここで話そうよ」

そう言って小町が指差したのは、像のすべり台の下側…ちょうどお腹のあたりにあるトンネルだった。

「…狭くね?」

「大丈夫だよ。片山は細いから。それにマンモスは大きいんだよ」

「…これマンモスなんだ。牙無いのに」

「当たり前じゃん!この広場の名前はマンモスでしょ?」

そう言うと小町はトンネルへと入っていった。俺も続いて象…もとい、マンモスの腹の下のトンネルへ入っていった。

↓目次

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