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サンシャイン [作者:檜山 キョウ]

■ 第5話

一週間後、ヒカリから手紙が届いた。
元気にしてるかとか、東京はすごいよとか、そんなことが書いてあった。学校にももう友達ができたらしかった。
僕はというと、やっぱりまだヒカリがいなくなったという感じがしないのだ。
あのすりガラスの窓を開けたら、まだそこにはヒカリの笑顔があるような、そんな気がしてしまう。
でも実際窓を開けたときにそこにあるのは、ヒカリがいなくなって静かになってしまった部屋だけだけなのだ。
ヒカリがまたがなくなった窓枠には埃がたまって、舞い散るそれは陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
でも、もっともっと輝いているヒカリの笑顔は、もう見られないのだ。
でもいつまでも引きずっていても仕方ないじゃないか。ヒカリは夢に向かって歩き出した。
僕も、踏み出さなければいけない時期なのだろう。
陸上を、もう一度始めてみようと思う。もちろんすぐにはうまくいかないだろう、二年ほどのブランクもある。
でもきっと、大切なのは結果ではなくて、好きなことに精一杯打ち込んだという軌跡なのだろう。
ヒカリだって、たとえファッションデザイナーになれなかったとしても後悔はしないはずだ。
だってヒカリには、それでも夢に向かって突き進んだという軌跡があるのだから。
僕が変われたら、ヒカリに会いに行こう。でも、ワガママかもしれないけれど、ヒカリには変わらないでいてほしかった。
無邪気で子供っぽいけどきちんとした芯を持っている、僕が想い続けたヒカリのままでいてほしい。
手紙の返事を書こうと思う。内容はまだはっきり決めていないけれど、一つだけ絶対に書こうと思っていることがある。
十六年間ずっと言えなかったことだ。

ヒカリへ。

僕はこれからもずっと、太陽のように輝くヒカリの笑顔が、

好きです。

 

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