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サンシャイン [作者:檜山 キョウ]

■ 第4話

翌日、ヒカリは珍しく玄関のチャイムを押した。
一階からヒカリと母さんの話し声が聞こえた。きっと、別れの挨拶をしにきたのだろう。
僕が玄関に行くと、ヒカリはひらひらと手を振った。

「ナオちゃん、私、行くね」

「もう……行くのか」

「早いほうがいいもの」

ヒカリは十二時過ぎの飛行機で東京へと向かうらしかった。
本当は空港まで送っていきたかったけれど、ヒカリはいらないと言った。

「だって、別れがつらくなるじゃんか」

仕方ないので家から歩いて十分ほどの場所にあるバス停までついていった。
バスが来るまでの時間、僕たちはずっと黙ったままだった。
別れにふさわしい言葉を捜したけれど見つからなかった。
やがて大型のバスがやってきて、ヒカリはそれに乗り込んだ。
また泣きそうになったけれど、必死にこらえた。最後くらいは笑っていたいと思ったからだ。

「ナオちゃん、最後なんかじゃないよ」

ヒカリの言葉に、僕は顔を上げた。笑おう笑おうと思って、むりやり口の端を引っ張った。
ヒカリも、泣いてるのか笑っているのかよく分からない顔をしていた。

「またね」

ヒカリは、さよならとは言わなかった。また会えると信じているからだろう。
バスは煙を上げて、ゆっくりと走り出した。僕は精一杯の力で腕を大きく振った。
バスが見えなくなるまで、ずっとずっと振り続けた。

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