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ハッピーデイ [作者:larkheart"95]

■ 最終章〜ハッピーデイ(後編)〜

ジェットはおとなしくつかまり、警察から取り調べられた。
しかし、彼は上の空のまま曖昧な返答しか彼らに返さなかった。
単に捜査を難航させようとしたわけではなく、彼の頭の中にはケイトのことしかなかったのだ。

「いい加減にしてくれないか!」

タイガー刑事がほえるようにジェットに向かって言った。捜査が遅れることによるいらいら感があふれていた

「なぁ、一つお願いしていいかい?」

ジェットが口を開いた。

「これを…この手紙をスパイダー君に渡してくれないか?」


翌日のことだ。スパイダーはタイガー経由でジェットからの手紙を受け取った。

『この中に入ってる手紙を国立病院のケイトさんに渡してくれないか?それから、みんなに悲しまないよう、憤らないようにしてくれと伝えてくれ』

スパイダーはジェットのやさしさに感動した。

「彼は…なぜあんなに悪く見られのだ?義賊ってなんだ?」

スパイダーは悩みながらも病院へ足を進めた。




「ケイトさんに面会を求めたいのですが」

意外とすぐについたので驚いた。少し疲れていそうな看護婦が応対し、部屋まで連れて行ってくれた。
まだ、彼女にあっていない彼は目が見えていないということに驚いた。

「ケイトさん。はじめまして、スパイダーというものなのですが、手紙を預かっております。」

なるほど、手紙が点字になっていた。やはり泥棒は器用だなと察した。

『ケイト様へプカより
今まで私はあなたを騙していました。
悪い人のはずがないとあなたは私に仰ってくださいました。
しかし、私は世間で騒がせた怪盗ジェットというものなのです。
私は元々は物乞いの身分で、世間を嫌っていました。飛び降り自殺しても、街中で発狂しても誰も見て見ぬふりをする人に絶望していました。
いつからか、そんな同胞をを助けたいと思い始め、[義賊]というのを目指してきました。
私には野望がありました。富める者の金を苦しい人に分けるために、盗むこと。それから…あなたの心を盗むことです。
優しくて素直なあなたを騙していたことをこころよりお詫びもうしあげます。
使ってくださらないとは思いますが、あなたの眼の手術の費用を貯めておいたので…何卒お願いします。』

すべて呼んでケイトは静かに泣いた。この涙が何を意味するか、看護婦にもスパイダーにも分からなかった。

数週間後、政府はある決断をしようとした。
ジェット信者と呼ばれる貧困層の人を排除しようという作戦を考え、軍に準備を申請した。
軍部は承知したといえども、かなり頭を悩ませていた。なぜなら、軍の大半が貧困層の者で、従わせるのが困難だろうと察したからだ。
この予想は的中した。スラム出身の青年将校を中心としてクーデターが作戦当日に起こったのだ。
迅速に作戦要項の文書を確保してから占領した。その文書は国際的に発表され、世界に衝撃を与えることとなる。
貧困層のヒーローである、ジェットは真っ先に解放され、認められてもいないのに、統治者に扱われていた。


ジェットはすぐにケイトを探し出した。会見とかリポートなどでもう夕刻になっていた。じかに謝らなければ当然気がすまなかった。
病院に聞けば、既にコンツェルンの社長に引き捕らえられてるという。ジェットは急いだ。
軍部が占領して分捕ったリムジンも用意されていたのだが断った。
すると会社の前のベンチにケイトが座っていた。…相変わらず眼に包帯を巻いたまま。

「プカさん、来てくれたのね。」

見もせずに、ケイトは言ってくれた。匂いと声で分かると彼女は言う。

「お父様がね、手術させてくださったんだけど…そのままどこか別の国に行っちゃったんだ」

少しさびしげに彼女は言った。

「勇気が無いのだけれど…この包帯、プカさんが取ってくれる?」

ジェットはそういわれあわてて包帯を丁寧にはずした。ケイトはゆっくり目を開いてジェットを見つめていた。すこし焦点合わせるのに手間取った。

「思い描いてたのよりずっとかっこいいのね…」

少し、ジェットは照れた。その上でこう言った。

「今夜から君だけに幸せな日々をあげたいんだ。君だけに…その目で僕だけをみていてくれるかい?」

彼女はゆっくりうなずいた。


↓目次

【第1話】【第2話】【第3話】【最終章(前編)】【最終章(後編)】