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ハッピーデイ [作者:larkheart"95]

■ 最終章〜ハッピーデイ(前編)〜

PM 6:00
EMPRESSビル36F倉庫

既にジェットは潜んでいた。いつもより念入りに
…相手は世界一の探偵と刑事なのだ。そういう緊張感がいつもと違って彼の心にのしかかっていた。
爆竹は自分の場所を知らせないように遠隔操作できるように細工した。


同刻同ビル4F会議室

役員と金目のものはここに集められた。すでに警備員に巡回を開始させた。

「刑事、ほんとにそこまでするのですか?」

タイガーは頷いた。彼の意思は固かった。
つい先程にスパイダーも帰ってきていたがかなり辛そうな表情をしていた。
…彼は、初めて現実を知った。世の中にはこれほどまで苦しんで生きている人もいれば、
私腹を肥やし、それを盗られるのを恐れる人もいるのだと。
ここの支社長は、横幅と身長が同じくらいに見えるおばさんだった。バランスボールに丁度いいと、一瞬だけ思った。
でも、きっとこの苦しみが過ぎれば平和がくると少年は信じたから行動した。ジェットがどこから進入してくるのか…


PM 8:00
ビル36F中央吹き抜け付近

ジェットは動揺していた。
10分前、堂々とジェットはここに立っていた。警備員が通りかかったが一瞬見ただけで驚き、足を滑らし、吹き抜けから地上まで堕ちてしまった。
これはまずい…下手に殺人容疑までかけられたとあれば後々ただじゃすまなくなる。
こめかみからあごへ一筋の汗が流れた。


同刻1F

一人の警備員が潰れて、他の警備員が必死で救命していた。

「ジェット…」

そう呟き、意識を失った。そのとき、救急車が現れ運ばれていった。
そのときだパーン!と勢いよく上の階から爆竹音がした。間違いない。ジェットが見せしめにこの人を突き落としたのだと、そう信じた。
一斉に彼らは上に駆け上がった。疲れも知らず延延と続く階段を。


PM 8:30
ビル21F

ジェットはあせっていた。鬼の形相で迫ってくる、警備員に初めて恐怖を覚えた。
…いつもと違う。なぜだ、なぜなんだ!恐れるな!ジェットは自分を叱咤した。
いつも応援してくれているスラムの皆も応援してくれていた。ここで引き下がってはいけないのだと。ただ先程から民衆の声が乱れていた。
やはり何か違った。スパイダーとタイガーの謀略…そう思った。
彼は追われ逃げながらも目的地に近づいた。幅数センチの渡しを切り抜けたり、四方を囲まれたりもした。
その都度必死で乗り切ったときには約束の10時に近づいていた。
あらかじめ友人の裏情報により、どこに集められたか聞いていた。
強行突破しか残されていなかった。ただ、警備員の動因状況的には手薄になってることは間違いないだろうと思った。



PM 9:55
ビル4F大会議室

ジェットは勢いよくドアを開けた。
そこにはタイガー刑事と…軍の兵士に銃を向けられている多くのスラムの人々がいた。

「怪盗ジェット、貴様が今おとなしく捕まらないと、この罪無き民衆の命が散ることになるのだが、さぁ、どうする?」

脅迫だった。そこまで卑劣な方法で捕らえられるのか…しかし、仲間を傷つけたくは無かった…

「ジェットさん俺たちにかまうな!」「まだお前を待ってるやつはいるんだぞ!」

彼らは叫んでいたが首を絞められ始めた。

「…わかった。従おう。」

ジェットはタイガーの前で膝を折った。

↓目次

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