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ハッピーデイ [作者:larkheart"95]

■ 第1話「僕はジェット」

ここはとある発展途上国。貧富の差が大きいことが社会問題になっていた。
ある、春の日の午後8時過ぎ。その首都の中心街のビルには人が集まっていたが、なにやら警備員と揉め合っていた。
ビルはその国で5本指に入る富豪の物だった。
そのビルに今夜、『怪盗ジェット』と名乗る男がもっとも価値のある金庫を午後9時に丸々一個盗むと予告してきた。
彼は富豪達から大変恐れられていたが義賊という側面も持っていた。なぜなら彼もスラムの出身であり、同胞に金を分けているという。
今、ビルの下で警備員と揉め合っているのも、ジェットのファンであるスラムの人間だった。
警備員はジェットに注意しなければいけないのに、スラムの人間にも気を取られて大変だった。
その富豪と腹心5名は一番価値あると考えられる金庫のそばにいて盗まれないように気をつけた。
そのビルの屋上の中心…ヘリポートがある場所に人が立っていた。彼こそが怪盗ジェットであった。
手際よく屋上の警備員はクロロホルムで眠らせていた。
そして、恒例としているゲーム開始の合図として爆竹を鳴らせた。
下からは歓声がどっと沸き起こった。大勢の味方を背に受けて彼はビルに忍び込んだ。
20:45。最上階の15Fだが電気は消えていた。社長がいるはずのところは7Fということは事前で調査済みだった。
一人警備員がいたが居眠りしていた。豊かな奴はのんきだよ!そう彼は思いながらエレベーターを開けた。
エレベーターには人がいなかったが監視カメラはきちんと付いていた。
ただ映るだけとか壊すだけとかは勿体無い。
そう思って彼は『ジェット参上!』と紙に書き、監視カメラに貼り付けた。

同刻。7F社長室。
爆竹の音を聴きつけた瞬間から全員の顔が引き締まっていた。
盗れるもんなら盗ってみろ。富豪はそう強がったが、冷や汗をかいて、ハンカチが手放せなかった。
そして、エレベーターの監視カメラにジェットの本人が映り、全員ドキッとした。『来たのか!』
さらに張り紙されて挑発されても怒るどころか怯え始めた。

20:50。7Fにてジェットは慎重に歩いた。しかし、トラップがわかり安すぎて手ごたえがさらさらなかった。
赤外線探知機も見え見えだったからそばにいた警備員をとっ捕まえて進行方向とは逆の赤外線トラップにぶん投げた。
ジリジリと耳を劈くような音を彼は半ば楽しみながら進んでいた。
他の部屋にも宝は見つかりそうだったが目的ではないので通り過ぎた。
何故か知らないがドアには黒板消しが仕掛けてあった。…なんてガキなんだ。そう思いつつ彼は着実に目的地に近づいた。
フフッ、チェックメイトだ。そう思いつつ、彼は作業に取り掛かろうとした。

21:00。社長室。時間ですと、腹心の一人が告げた。
一同はほっとし始めた。一番、価値の高い金庫はずっと本人が抱えていたし、中身も今確認し終わった。
何も取られていない!そうわかると社長室は歓喜の輪に包まれた。

翌朝、一同は異変に気づいた。
一個、別の部屋の金庫が盗まれていたが富豪は気にも留めなかった。
あきらめて別の物を取ったのだと、そう思っていた。それを考えると腹心たちもほっとした。
盗まれたその金庫には大量のある会社の株券が入っていたのだが…
ジェットが入ったときは確かに富豪の持っていた金庫の現金と宝石のほうが価値は高かった。
しかし、翌日の夕方にはその会社の株の値段が一気に上がり、軽々と富豪が抱えていた金庫の価値を越えてしまった。
ジェットは頃を読みそれを裏で手放し、また儲けた。それを知ったとき、初めて富豪は悔しがった。
このように先を読むことがとても優れ、想像を絶することをやってのける怪盗であった。

↓目次

【第1話】【第2話】【第3話】【最終章(前編)】【最終章(後編)】