夜を駆ける2 [作者:あつこ]
■30
僕はホタルの小さな手をひたすら握りしめる
手を離したら、終わってしまいそうで。全て夢のように、消えてしまう気がして。
ホタルと、離れたくない。ずっと一緒にいたい。
そんな事、夢見てるなんてなんて僕は愚かなんだろう。
でも、僕はこうしてホタルのことを考えるだけで胸が張り裂けそうになる
苦しくって、喉が焼けそうになって息も出来ないような・・・
これが、「恋」なんだろうか?だとしたら僕は今までなんて小さな恋しか知らなかったんだろう。
ホタルと、沈黙が続いた。
ホタルに対する気持ちはこんなに溢れんばかりにあるのに、
僕は言葉にすることが出来なかった。
ただ「愛してる」や「好きだよ」なんて言葉じゃ足りない、伝えきれない。
多分この気持ちはどんなに言葉を尽くしても言い表せない。
この気持ちは恋、の一言では片付けられない・・・
相手を思いやるだけじゃなく、相手のために自分を犠牲にするわけでもなく
お互いがお互いを思いあって、そのために優しくなることが出来るのなら…
僕は、「愛」の意味を生まれて初めて分かったような気がした
この気持ちは声にならないほど強くって、でもうまく言葉に出来ない。
言葉にすることは出来ないけれど
僕はホタルのほうに体を寄せて、何もせず、ただ抱きしめた
ホタルはニコッと笑って、僕の胸に顔を押し付けて来た
ホタルの香りがする。月に照らされたツユクサのような・・・胸が痛くなる甘い香り。
その匂いが立ち込めて僕はゆっくりと眠りにつく
そんな香りのせいか。僕は終わりが近づいてきてるのに、全く気づかなかった
・・・いや、気づこうとしなかっただけかもしれない。
でも確かに、終わりは朝と共にやってこようとしていた。
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