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僕らのプレイリスト [作者:9700]

■第1話−4

とたんに、息が苦しくなった。泳ぐこともできない。長い手足で、もがき続ける。
すると、誰かが沈みゆく僕の前に現れた。いつかの、僕の正体を教えてくれた魚だ。
「助けて・・・」
どうにか、言葉になった。しかし、その魚は耳打ちした。
「君はもう、ウミガメじゃない。・・・・人間だよ」
それを理解することもできない。体が重い。息が苦しい。そして、だんだんと沈んでいく。


しばらく沈んでいた。
あの魚はもういない。それどころか、なにも見えない。ただただ真っ青な世界が広がっていた。
それでも、この世界は美しい。美しすぎる。
僕が見たもの全部が、あの忘れられない姿が、この世界。
そして、なによりもこんな僕をこのすばらしい世界に招いてくれたことが、僕にとっての最高の美しさの理由。
少しずつ現実に引き戻されながら、そのことで頭がいっぱいだった。
そして、そういう気持ちでいっぱいになっていくほど、現実は早足で近づいてきたのだった。



↓目次

【第1話】