スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

インディゴ地平線 (作者:優)

インディゴ地平線 【5】

一番に目に入ったのは、視界一杯に広がる青い空の色。


雲一つ無い空の色は言葉に出来ない程きれいで、あたしはぼんやりと空を見
続けた。
空は本当にきれい。
だけどどこかにある太陽が眩しくて目が霞む。


(この空の色を見ていたいのに)


邪魔をしないで
あたしは見ていたいの
とてもきれいな、この色を
どこか懐かしい、この色を


(でも、何か足りない…)


ぼんやりとした思考のまま空に向かって手を伸ばしてみたけれど、当然何も
掴めなかった。

「…」

諦めて手を下ろし、横になっていた身体を起こす。

真上にあるのは先程掴めなかった空。
真下にあるのは乾いた砂の大地。

それはあたしが見渡す限りいっぱいに広がっていて、遠くの地平線で交わっ
ていた。

「砂漠…?」

首を動かしてあたりを見渡すが、やはり視界には空と砂、時々遠くの太陽や
岩場ぐらいしか映らない。
疑うまでも無く、ここは砂漠なのだ。

「…暑い」

自分が今いる場所を認識した途端、汗がどっと噴き出した。
身体が体温、温度というものを思い出したようだ。

暑い、熱い

さっきまで眩しかっただけの太陽は、容赦なくあたしを照りつけ熱を与え
る。
どこか陰は無いかと探してみるが、やはり周りにあるのは砂、砂、砂。
遠くに岩場も見えるが、とても歩いて行けそうにない。
自分の周りにも、荷物らしきものは見あたらず、水も無い。

「…もう、いいや」

歩く気力も無い。
荷物も水も無い。
人影も無い。
あるのは、砂と、空の色だけ。

ならいっそのことここで眠ってしまおう。
それで死んでしまったなら、それが運命だったと諦めよう。

そう思いながらまた砂の上に横になり、あたしはそっと目を閉じた。

優 著