スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

インディゴ地平線 (作者:優)

インディゴ地平線 【3】

「空の…端?………………ぷっ」

とても満足気な顔で、あまりにも下手な嘘をつく彼に、あたしは思わず笑っ
てしまった。
それを見て彼が首を傾げる。

「あれ?なんで笑うの?」
「だって…っ、嘘、下手すぎ…」
「…うーん、じゃあ他の理由…」
「もういいです。これ以上笑わせないで…ふふっ」

腰に手をあて新たな嘘を生み出そうとする彼に、笑いながらも制止をかけ
る。
世界にはこんなに嘘が下手な人がいるんだなぁ、と考えながらあたしは暫く
笑い続けていた。





「…君さ、笑いすぎ。俺傷付いちゃうだろ?」

笑って笑って自分でも笑いすぎだなぁと思い始めた頃、彼が拗ねたようにそ
う言った。

「ごめ、なさ…っ。ふふっ、お腹、痛い…」
「それだけ笑えば痛くもなるよ。自業自得」

こういうのって自業自得って言うの?
お腹を押さえ、そう思いながら彼を見ると、彼は呆れ顔でこちらを見てい
た。
さっきの笑顔とは違う顔に、思わずドキリとする。

「…」
「笑い、収まった?」
「…はい。すみませんでした」
「いいよ。緊張も解れたみたいだし」
「はい、」

彼の言う通り、彼と話し始めた時よりあたしの気持ちは落ち着いている。
遠くの存在だった彼が、今は少し近くに感じる。
人見知りが激しいと自覚もしているあたしが、短時間でこう思えるなん
て…。
これは、彼の持つ力なのだろうか?

「えーと、シャロ…ちゃん?」
「呼び捨てで構いません」
「じゃあお言葉に甘えて。…シャロ」
「はい」
「俺のことも呼び捨てでいいから」
「…ルディ」

なんだか恥ずかしいな、と思いながらもそう呼ぶと、彼…ルディは嬉しそう
に笑ってくれた。
その笑顔は何故かあたしを安心させる。

「…シャロ」
「はい」
「敬語やめない?堅苦しいから」
「…、」

また「はい」と言いそうになったので無言で頷く。
ルディは「それでよし」と言ってあたしの頭をポンポンと軽く叩いた。
何だかすごく子供扱いされている気になったけど、嫌な気持ちにはならなか
った。

「あぁ、それともう一つ。俺、飽きるまでこの町に住むことになったから」
「え」
「家はシャロの隣。だから今日、青い目見るついでに挨拶しようと思って探
してたんだよね」
「隣…」

突然知らされた事実に驚きを隠せない。
ていうか、何でそれを初めに言わないの。
頭がパニックになりかけたが、ルディの笑顔を見ていると「まぁどうでもい
いか」と思ってしまう自分がいた。

「これからよろしくね。…ルディ」

優 著