スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

タイム・カプセル (作者:えりんこ)

タイム・カプセル 【20】

スティックの鳴らす音と共に演奏が始まる。

生のバンドの演奏に未紀は鳥肌を立てていた。

「こんなにすごいんだ…生って…CDでさえ鳥肌立つのに…」

そう思いながら、目の前の演奏に聞き耳を立てていた。




「はいっ。とりあえずこんな感じだよースピッツって。」

演奏を終えた草野が未紀に呼びかけた。

「も、もう十分です!」

「演奏レベルはお粗末なのは俺らがいっちばん分かってるんで…」

「いやいや…生バンドって憧れなんです! でも、誰もそういうのに興味が
なくて…」

いったん顔を上げた未紀の顔が沈んでいく。


「そうだ!みんなでメシ行こうぜ! 今日は未紀ちゃん歓迎パーティーとい
うことで!」

テツヤが呼びかけると、「賛成!」という声があがった。

「そーいうことだ!移動しようぜ!」

草野が未紀に呼びかけると、片づけをしにいった。


「なんか悪いなぁ…こんな顔してるのがいけないんだ!」

そう言い聞かせた未紀は、笑顔を作ってメンバーについていった。





「未紀ちゃんようこそ!スピッツへ!かんぱーい!」



昼から焼肉とは…と思いつつも、楽しい雰囲気に思わず笑みがこぼれる。

「うへーい!未紀ちゃんものめのめー!」

草野が未紀を呼び寄せる。

「いえ!まだ未成年なんで!ダメです!」

「まーませちゃってぇ〜 飲んじゃえよぉ〜」

「いや、結構です!」

「ぷー、なんだーじゃあ!」

「どーぞ、お構いなく〜」





案の定草野は、ベロベロに酔っ払ったままアパートへ戻ることになった。



「みなさん、ご迷惑おかけしました…」

アパートの部屋の前で未紀はお礼を言った。

「いやいや…いつものことだよ、なんかお母さんみたいだねー」

「え?そうですか?」

「ホントホント!じゃあ、マサムネのことは任したぞ!」

崎山が念を押すように言うと、3人並んで帰っていった。


「お母さん。草野さんってなんか…わかんない人だね。」

えりんこ 著