スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【13】

もう、あの日からずっと、公園に行ってない。
『これで終わると思うなよ。』
耳の中で、先輩達の笑い声が響く。
なんで逃げなかったんだろう・・・・。
なんで、誰も通らなかったんだろう・・・・。
なんで、なんでってずっと考えてても、なにも解るわけも無いのに、ずっと。
「天、ご飯できたけど。」
「いらない」
「何言ってんのよ。早く降りてきなさいよ。」
お母さんも、わたしの食欲のなさに気づいていないのかなんなのか、わたしをしたの階へと引っ張りだしてくる。
あの日から毎日、風からのメールもくる。
そのときはじめて、わたしが風にメールアドレスを教えていたことに気づいた。
でも、メールも見れないまま、ずっと置いてある。
なんで、メールさえも見れないのか、自分でもわからない。
どうして自分は、もっと強くなれないんだろう。
どうしてわたしは、自分を悲劇のヒロインに仕立て上げてしまうのだろう・・・・。
どうしようもない、この不安と痛み。
それは、わたしの耳の中で渦を巻き、やがて鮮やかな、苦しい記憶、そして、言葉になって、目からこぼれてくる涙、どんどん大きくなる渦の原因になった。
この不安、痛み、苦しみ、怖さから、もっと前に逃れられたら、どんな生き方をしていたんだろう・・・。
このまま、ここから逃れられずにいたら、どんな人間になってしまうんだろう・・・・。
でも、もしここから逃れたら、もっと弱い人間になっちゃうんじゃないんだろうか・・・・。
死ぬ、なんてことは考えられなかった。
そんなに弱い人間にはなりたくなかった。
―――せめて、どうせ死ぬのなら、絶対にやらなければいけないことを果たしてからだ・・・。
絶対にやらなければいけないこともわからないのに、そんなことを考えた。
小さい頃に聞いた、お母さんの言葉がちらついていた。
でも、ちゃんと思い出せない。
大切な言葉だったはずなのに・・・。
わたしが、今一番必要としてる言葉なのに・・・。
思い出せぬまま、わたしはゆっくりと意識を失った。
そして、夢へと落ちていった。

P 著