スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【12】

最悪だ。
3学期の初め、公園に行く途中のこと。
先輩と会ってしまった。
「あぁ!天ちゃんじゃねぇ?」
「ほんとだー!裏切り者だぁ!」
しかも、3年の、同じパートだった先輩に。
部活のために早めに出てきたらしいかった。
怖くて動けなくなった。
―――誰か、通りかかってくれないかなぁ・・・・。
そんなことをずっと考えながら、じっと、じっと待っていた。
「こんな早くになにやってんのかなぁ?」
近づいてきた。
「やあ、天ちゃん、元気だったぁ?」
話し掛けられた。
―――なんで、わたしは逃げなかったんだろう・・・・
いまさら後悔。
「なにやってるのかなぁ、こんなに早い時間に。学校にも来てないらしいじゃん?」
「裏切りもんが、うちらの前に顔出せるわけないじゃん!」
「あ、そうだよねぇ!」
―――わたしは耐えるだけ、この時間を耐えるだけ・・・・・
必死でそう自分に言い聞かせた。
きっと、誰かが通りかかって、先輩達があきらめるはず。
「ねぇ天ちゃん?君さぁ、どんだけうちらに迷惑かけたか知ってる?」
「楽器のこと、けがされて、それからまだ、うちらに迷惑かけるんだよねぇ!」
先輩達が言っていることは、間違いだ!
全国大会まで、わたしがいなくなってからも、出場して、しかも銅賞とったはずだ!
―――叫ばない、絶対に声に出さない・・・
「もうさ、『わたしには関係ない』とかいえないんだよね。部活入った時点で。」
「責任ももてないようじゃ、やってけないし。」
「てかもうやってけてないよねぇ。」
「自分がそんなんだから、やってけなくなるんだよ。」
なにが言いたいんだ!
苦しめたのはそっちじゃないか!
―――・・・・・・・・・・・・・・・誰か来て・・・・・・・
「なんか、君さ、あたし達がいじめてるとでも思ってんじゃないの?」
「さっきから、一言も言い返してこないしね。」
「まぁ、言い返してきたらもっと言ってやるけどね。」
「ねぇ、もう時間。練習時間に間に合わなくなるよ。」
「行こっか。あーあ、遅れたら君のせいだからね。」
「これで終わると思うなよ。」
先輩が、学校のほうへ走っていった。
わたしはなんとか、叫ばずにすんだ。
でも、どうしようもない、不安と痛みだけが、鈍く残っていた。

P 著