スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【14】

『天は、絶対に、一番大切なものをなくしちゃダメだよ。』
『なんで?大切なものって、なんなの?』
『お母さんはね、大切なものをなくしちゃったのよ。だから、天はなくさないでね。』
―――お母さんの大切なものって、お父さん?・・・・・・・・・
目が覚めた。
―――そっか、わたしの思い出せなかった言葉、これだったんだ!
わたしのお父さんは、わたしが産まれる前に死んでしまった。
写真では見たことがあるけど、あまり覚えていない。
背が大きくて、ちょっと病弱そうな人。
そんなイメージしか出てこなくて、この人がわたしのお父さんなんだ。って言う感覚が全然無かったことは覚えている。
―――わたしの、大切なもの・・・・?
幼稚園の頃にもらった、ぬいぐるみのくまさん?
小学校の頃にもらった、お父さんのかたみの綺麗なぬの?
あれの使い方はわからなかったなぁ・・・。
それとも・・・・・・まさかね。
でも、もしかして・・・・・・・・風?
そんなこと・・・・・・・
そのとき、携帯がメールを受信した。
おそるおそる開く。
風。
なんでだろう?偶然?タイミングよすぎるよ、風。
まさか、運命なんて。
ありえないでしょ。
はじめて、風のメールを見た。
『おまえ、なんで毎日こないんだよ。俺、ずっと毎日、時間ぎりぎりまで待ってんだぞ。
こなくなってから何ヶ月たったと思ってんだよ。もうこっちは3年になりそうなんだぞ。
これ以上待たせとくと、もう絶対に口聞かないかんな。』
―――なんだよこいつ・・・・ずっと憎まれ口叩きやがって・・・・・。
涙。
なんでこんなときに?
おーい、わたし、ここ泣くところじゃないよ、怒るとこだって。
大丈夫ですかー、感情鈍ってきてますよー?
―――そんなんじゃない・・・・・・。
なにいってんの、なんで泣いてんの・・・・
―――きっと、これは・・・・・・・・
解ってるよ、解ってるから・・・・・・・・。
言葉に出来ないほど、ここには綺麗が詰まってた。
この、憎まれ口ばっかりの文章の中に、わたしの大切なものが、数え切れないほど、たくさん
たくさん・・・・・。
―――もう、わたし無敵なんじゃない?
これで、強くなれる気がする。
あいつに救われるなんて、思わなかった・・・・・。
もう、会いに行くしかなかった。
というか、勝手にそうなった。
気がつくと、わたしは、公園にいた。
大切なものを見て、また涙があふれた。

P 著