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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 13

猫を撫でている彼の目は優しかった、誰かに似ている。と私は頭の中で過ぎった
もしかして、あの人・・・
目を疑った、だって、彼は、そんなまさか・・・

圭ちゃんの目は優しく、吸い込まれるように澄んだ目を持っていた
私は彼の目が好きで、大好きでときどき唇だけじゃ無く、目にもキスをした

パッチリとした、二重の目・・・というわけでは無いんだけど
奥二重の、優しくまつ毛が長い目。
吸い込まれそうにキレイで澄んだ目、

彼の目ならすぐに分かる自信があった
ただ、4年というブランクがあるから、間違ってるかもしれない、
いや、違うだろう。まさか、でも。

「おや、どうかしましたか?」
旅人さんが私に気づいて声をかけた
私は恥ずかしくなって来て、抱えていた魔法瓶を持って、俯いた

「その・・・寒くないですか?ずっとそこに居て。」私は火照った顔をしてそう言う
「やっぱり寒いですね、でもだいぶ慣れました。」

「そうですか・・・なら良いんです。あの、お腹すいてませんか?」
「んー・・・ちょっと、すいてるかもしれません、どうかしたんですか?」
旅人さんは不思議そうにこっちを見た

そんなに寒くない、慣れたと彼は言ってるし、あんまりお腹はすいてないようだし、
私が作ったスープなんて要らないよね、と思うと何故だかとても恥ずかしくなった

「何でもないです、ごめんなさい。」私はそう言って後ろに振り返って
バレないようにスープが入った魔法瓶を胸に抱えて帰ろうとした
「待ってください、その手に持ってるもの。何ですか?」
旅人さんは 膝の上に乗っていた猫を下に下ろして
私に問いかけてこっちに来た

そして私から魔法瓶を取って、中をのぞいた
「スープ・・・ですか?」そう問いかけられて私は少しうなずいた
フッと口元だけ笑って「美味しそうですね、もらって良いですか?」と言った

全てを悟ったかのようにして笑うその人の前で私は小さな子供のように恥ずかしくなり、俯いて真っ赤になった
私に気づいてるの?優しいだけなの?
私のことなんて忘れてしまったの?
それとも、ただの私の勘違いかも。

想うことは山ほどあった、でも少し地面から目線をはずすと美味しそうにスープを飲む彼の姿があって少しホッとした。

「懐かしい味がします、美味しいです。久しぶりだな、」と旅人さんは笑って
「おかわり、もらって良いですか?」と言ってもう一杯キレイに残さず飲み尽くした
体が暖まったようで私は胸を撫で下ろし、別れを告げた

スープ、飲んでくれて良かった、そんなことばかり考えながら自分のアパートへ帰った



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